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10章:テーマパーク(11) SIDE 宇佐野

SIDE 宇佐野


 あの子を助けなきゃ。

 でも……怖い……。

 凶器は持っていないようだけど、牙で幼女に噛みつくような人だ。

 あの牙はマウスピースのようにつけているのだろうか?


 いずれにせよまともではない。

 人を呼びに行った方がいいだろうか。

 でも、幼女を放って逃げるのも……。


 こういう優柔不断さが、自分の寿命を縮めるということを思い知る。


 ふと気付くと、背後から私の首に両手がかけられていた。

 細く冷たい指先が、私の首を締め付ける。


 学園祭で何を学んだのだ。

 動けるときすぐ動かないからこういうことになる。

 すぐに逃げて人を呼ぶか、お姉さんに体当たりでもすべきだったのだ。


 視界が白くなったところで、首筋に強い痛みを感じた。

 噛みつかれた。

 血を吸われるってこんな感覚なんだ……。


 振り払おうとするが、力が入らない。

 声も出ない。

 怖い……。

 私、このまま死ぬの……?


 ああ……難波君に告白をしておけばよかった……。

 あんなことやこんなこともしてみたかった……。

 実はちょっとだけ自信のある胸を触ってほしかったし、キスもしたかった。

 それ以上のことだって、難波君となら……。


 そう思った瞬間、突然体が内側から熱くなった。

 一人でえっちなことを考えているときとは違う、焼かれるような熱さだ。


「き、貴様、神器持ちか!」


 背後でお姉さんが飛び退いたのを感じる。


 じんぎって……神器?

 お話に出てくるような?

 この人、何を言って……?


 お姉さんの方へ振り返ると、さらに全身が熱くなった。

 体が……変わる……。

 おかしな表現だが、そうとしか言いようがない感覚だ。


 髪が伸び、手や足に白い毛が生えじめ、手には肉球まで現れた。

 身につけていたTシャツと七分丈のパンツ……というか、中に履いていたパンツまで破ける。

 パンツとパンツがダブルブレイク!

 くだらないことを考えている場合じゃない。ついでにブラも破れている。

 そして、体の大切な部分を申し訳程度に覆い隠すように、白いいふさふさの毛が生え、胸のあたりは黒いぴっちりした布が生成される。

 頭を触ると、カチューシャにはウサミミがついていた。

 しかも片耳だけたれているという、謎のこだわりっぷりだ。

 おしりについた丸いしっぽを触ってみると、しっかり感覚がある。


 もしかして、変身した……?

 なんで急に?


 わけがわからないが、これは現実だ。

 有名な格闘ゲームのキャラクターに、ネコを擬人化したキャラクターがいたが、それをウサギにしてバニーガールの服と混ぜたような感じだろうか。

 なんてえっちな格好だ!


 そんな私の頭に最初に浮かんだのは「特別になれた」ということだった。

 しかし、そんな甘い考えはすぐに吹き飛ばされた。


 ロングスカートを翻したお姉さんの蹴りが、私の腹部に突き刺さったのだ。

 近くの木に叩きつけられ、肺の空気がはき出される。

 さらにお姉さんが追撃をしてくる。


 逃げなきゃ!

 そう思ったときには体が自然に動いていた。

 私は木を素早く昇り、枝の上からお姉さんを見下ろしている。

 木登りなんて子供以来だが、私の体はとても身軽に動いた。


 枝から枝へと飛び移る。

 体が軽い!


 しかし、お姉さんの手から放たれた見えない刃が、私の着地した枝を切り落した。

 枝とともに、クルリと体を回転させ着地するも、そこにお姉さんの追撃がきた。

 3メートルほどに伸びた爪が襲ってくる。


 普段の私ならなにもできずに斬られていただろう。

 慌てて飛び退いたおかげで、頬を浅く斬られただけですんだ。

 一方、私が叩きつけられていた木は、その太い幹をばっさり斬られ、轟音とともに倒れている。

 あんな細い爪でどうやって!?


 物理法則はどこに行ったのか。

 それは自分の姿にも言えることだけど。


 お姉さんの攻撃をなんどもかわすが、だんだん肌に切り傷が増えていく。

 どうしよう……逃げられない。

 覚悟を決めかけたその時、横からやってきた何かにお姉さんは吹き飛ばされた。


「まさかソレに適合できたのが、あなたなんてね」


 そこにやってきたのはまさにヒーロー、いや最強のヒロインだった。



ここまでお読み頂きありがとうございます。

続きもお楽しみに!


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― 新着の感想 ―
[一言] 体が軽い→もう何もこわくない→負けフラグ
[一言] ストーリーには全く関係ないのですが、 ホンモノのウサギに肉球はありません。
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