10章:テーマパーク(9) SIDE 由依
SIDE 由依
テーマパークというのは良いものね。
一人でいてもナンパされないし。
パーク内の作りは非常にこっていて、あちこち見て回るだけでも楽しい。
うっかりネコミミやしっぽを買ってしまった。
パーク外では絶対にできない格好だ。
このソフトクリームもとても美味しい。
自分がネコになるというコンセプトのパークのようだが、コーンの包み紙に肉球がデザインされているのはどういう理屈なのだろうか。
子猫に踏まれたという設定かな?
そんなわけないか。
ただのデザインだよね。
一人でも楽しいのは楽しいのだが……。
やっぱりちょっと寂しい。
今度はカズと二人で来たいものだ。
今日は二人がここに来ると聞いたので、こっそり様子を見に来てしまった。
双葉ちゃんとの水入らずを邪魔するつもりはないけど、兄妹でへんなことをしようとしたら止めに入るつもりだ。
双葉ちゃんがカズに惚れているのはわかっているんだからね。
夜のテーマパークは、そういう雰囲気になりやすい。
……と、聞いたことがある。
まさに夜のキャットウォークパレードである。
自分でも何言ってるかわからないけど。
それにしても、宇佐野さんは朝からずっと何をしてるんだろう。
私はもちろん、カズ達がヴァリアントに襲われた時に加勢するためだけどね?
カズにそんなもの必要ないという意見は……まあ、うん。
まさか宇佐野さん、カズ達をつけてきた?
学園祭あたりからやたらとカズに絡んでいたようだけど……もしかして、どこかの組織と関わりが?
宇佐野さんがカズのことを好きかも、というのは思っていたけど、それだけでまさか一人でテーマパークにやってくるとは思えないし。
うーん、でも白鳥家のネットワークに宇佐野さんがひっかかったことはないんだけどなあ。
エージェントとして尾行してるにしては、ヘタクソすぎるのよね。
限定のネコミミカチューシャなんてつけてるから、とても目立っているし。
彼女がそれほど危険な存在だとは思えないけど、一応警戒はしておく程度で良いだろう。
カズも彼女の尾行には気付いているみたいだしね。
――リンリン。
そこに、ベルを鳴らしながら、移動販売のワゴンがやってきた。
ああ! 夜限定のチュロス!
それくださーい!
ここまでお読み頂きありがとうございます。
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