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10章:テーマパーク(6)

「あれえ? 難波君じゃない?」


 双葉と並んでベンチでチュロスを食べていると、渡辺があらわれた。


「人違いだ」

「ほんとにそうやってはぐらかす人、初めて見たよ!?」

「一人で来てるのか?」

「キャットミーランドに一人では来ないでしょ……」

「ガチな人は一人で来るかもしれないだろ」

「まず想定するのがガチな人ってあたりが難波君だよねえ」


 褒められてないことはわかるぞ。


「クラスのみんなと来てるの」


 渡辺が視線を向けた先には、5人の男女がいた。

 たしかにクラスの連中だ。

 わかりやすいほどの陽キャ組である。

 その中には鬼まつりもいる。

 渡辺率いる陽キャ組と、鬼まつり達ギャル組はそんなに仲良くなかったはずだが、最近あの二人、よく一緒にいるんだよな。


「難波君にも電話したんだけど、ずっと留守だったみたいだったんだよね。妹ちゃんに伝言頼んだんだけど」


 オレがちらりと双葉をみると、双葉はしれっと空を眺めていた。

 この顔……わざとだな?

 理由はわからんが。


「こいつがその妹だ」

「双葉です。お兄ちゃんがおせわになってます」


 ベンチから立ち上がった双葉がぴょこんと頭を下げた。


「やーんかわいい! 難波君の妹ちゃんとは思えない!」

「どういう意味だよ」


 気持ちの良い台詞ではないが、じょうだんのつもりなのだろうし、こちらの事情も知らないだろうからしょうがない。

 双葉が一瞬眉をひそめたが、すぐ笑顔に戻った。


「そういや、電話番号なんて教えたか?」


 少なくともオレが直接教えた記憶はない。


「何言ってるの? クラスの連絡網に載ってるじゃない」


 昔はそんなものもあったな。

 未来では個人情報保護のため、死滅した文化だが。


「あの、難波……。良かったら一緒に遊ばない?」


 こちらにやってきた鬼まつりが、おずおずと誘ってきた。


「ごめんなさいお姉さん達。今日は兄妹で水入らずなんです」


 そこで間髪入れずに割って入ったのは双葉だった。


「そ、そっか。ごめんね……?」


 双葉の『圧』を伴った笑顔に、たじたじになる鬼まつりである。




「お兄ちゃんってモテるんだね」


 渡辺達と別れてしばらくすると、双葉がそんなことをつぶやいた。

 機嫌が悪いんだか良いんだかよくわからん顔で睨み上げてくる。


「どうだろうな……」


 鬼まつりには好かれている自覚があるので、なんともとぼけにくい。


「うわ……余裕ってやつ?」


 双葉がぷくっと頬を膨らませた。


 これは何を言ってもだめなヤツだ。

 オレは肩をすくめることしかできない。


 とりあえず人混みではぐれないよう、双葉の手を引いて、次のアトラクションへと向かう。


「うぅ……こんなことでごまかされな……むぅ……」


 双葉はなにやらうなっているが、手をつないだだけで喜んでくれているのだとしたらまあいいか。


ここまでお読み頂きありがとうございます。

続きもお楽しみに!


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