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10章:テーマパーク(5)

 夏休みのキャットミーランドは、どこを見ても人だらけだった。

 さすが日本で最も知名度のあるテーマパークだ。

 エントランスに来たものの、入園待ちの人だかりでゲートが見えない。


「わくわくするね!」


 オレがあげたカチューシャ型神器をつけた双葉が、瞳をキラキラさせている。


「そんなに人混みが好きだったのか」

「もう! ちがうでしょ! これから夢の国に行くんだからテンションあげてよ」

「夢の島?」

「国!」

「国て……パスポートでも必要なのか?」

「そうだよ?」

「え? マジ? 回数券じゃないの?」

「お兄ちゃん……いつの時代の話をしてるの? 今は一日券のパスポートだけだよ」


 オレが小さな頃、両親につれてきてもらった時は回数券だったんだよな。

 キャットミーランドに来る機会なんてあれ以来なかったからなあ……。


 ん……?

 人混みの中に見覚えのある顔がいたような……。


 オレはいつものクセで直接目を合わせないよう、視界の端でその顔を探した。


 んー……いた。宇佐野だ。

 小学校低学年くらいの女の子と話している。

 親戚の子か誰かだろうか。


 声をかけた方がいいか?

 妹を放っていくのもなんだし、宇佐野が親戚といるときにはクラスメイトと会いたくないと思ってるかもしれない。

 お互い気まずい思いをするくらいなら知らないフリをするのが得策か。


 オレが宇佐野に気付いているとは知らず、彼女はチラチラとこちらに視線を送ってくる。

 彼女も声をかけるべきか迷っているのだろうか?


 そうこうしているうち、宇佐野はこちらに気付かれないよう、逃げるようにして人混みに紛れて行った。

 やっぱり気まずいよな。

 うむ、声をかけなくてよかった。


「どうしたの、お兄ちゃん?」

「クラスメイトがいただけだよ」

「へー、すっごい偶然だね。声かけなくていいの?」

「向こうも親戚ときてたみたいだからな。気まずかったんだろ」

「えー? あたしだったらお兄ちゃんを自慢しちゃうけどな」

「おいおい……恥ずかしいからやめろよ?」

「えー? でも、あたしのクラスの女子、みんなお兄ちゃんのこと知ってるよ」

「なんで!?」

「キャンプで大活躍だったから、色々聞かれちゃって」

「あぁ……そりゃしょうがない」

「そうじゃなくても自慢してたけどね」

「やめて!?」


 まじかよ。

 恥ずかしくて双葉のクラスメイトに顔を合わせられないぞ。


「えへへ、今日偶然会っちゃったりして」

「そうやってフラグを立てるんじゃない」

「フラグって?」


 双葉がきょとんと首を傾げた。


「なんでもない。こっちの話だ」

「まあいっか、はい」


 双葉はそう言って手を差し出してきた。


「なんだ? 入園料ならちゃんと払ってやるぞ」

「ちがうでしょ! こんなに人がいっぱいいるんだからはぐれないように!」


 双葉はぎゅっとオレの手を掴んできた。


「けっこう握力あるなあ」

「もう! 力の加減がわかんないんだよ!」


 中学生になった妹と手を繋ぐなんて猛烈に恥ずかしいが、双葉がそう望むなら今日だけは特別だ。

 こうなったら、宇佐野に見られないようにしないとな。



ここまでお読み頂きありがとうございます。

続きもお楽しみに!


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