10章:テーマパーク(3)
双葉が買ったのは、結局動きやすいキャミソールにスパッツだった。
「そういや、どこに遊びに行きたいんだ?」
「キャットミーランド! だから動きやすい服がいいと思ってね」
双葉が指定したのは、日本で最も有名なテーマパークだ。
行き先としては文句はないのだが……。
「じゃあなぜ水着の試着をしたんだ?」
「せっかくだからショッピングも楽しみたいもん」
まあ楽しそうにしてくれたからいいんだけどな。
そんな会話をしながらやってきたのはフードコートだ。
「フードコートって、色々あってわくわくするね!」
スペースの中央にイスとテーブルがたくさんならんでいて、それをぐるりと囲むようにお店がならんでいる。
ラーメンやチキン、たこやきにカレーなど、色々な店舗が並んでいる。
かなり遅い昼飯になってしまったが、それでもフードコートは混み合っていた。
席をとっておくほどでもないので、オレと双葉はそれぞれ食べたいものの店へと向かった。
双葉はパスタ、オレはラーメンを選んだ。
ラーメン屋は九州に本店を置く有名なチェーン店だ。
たまにはこういう贅沢も良いだろう。
こんでいる時間帯なら行列なのだろうが、今は数人しか並んでいない。
「難波君……?」
メニューの看板を眺めていると、後ろから聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「宇佐野か」
「うん、家族できてるの」
そういう宇佐野は少し恥ずかしそうだ。
高校生の頃ってそうだよな。
なぜか家族といるところを見られるのが恥ずかしかったりするのだ。
「難波君は……白鳥さんと?」
「いいや、妹と来てる」
「兄妹で? 仲良いんだね」
「そうでもないさ。今週、キャットミーランドに連れてけってせがまれてな。そのための買い物に付き合わされてるだけだ」
「やっぱりとっても仲良しなんだ。いいお兄さんなんだね」
「そういうんじゃないって」
「年頃の兄妹で一緒に遊びに行くなんて珍しいと思うけどなあ。違うのかなあ」
うちも前の人生じゃそこまで仲良くしてたわけじゃないから、なんとも言えないな。
あの時は、双葉に一方的に護ってもらっていたわけだが……。
「ならんでる時に話してた人、誰?」
双葉と合流すると、さっきまでの上機嫌が一転、口を尖らせている妹がいた。
「同じクラスのヤツだよ」
「仲良しなんだね」
「学園祭の実行委員で一緒だっただけだ」
「ふーん? 向こうはそう思って……なんでもない。食べよ?」
多少、好意を持たれている自覚はたしかにあるけどな。
それを一目で見抜くとは、洞察力の高い中学生だ。
女子ってのは早熟だって言うしな。
宇佐野は前の人生でも、話す回数こそ少なかったが、オレによくしてくれることが多かった。
当時はオタク仲間として話したことはないはずだが、同類だと感じていたからだろうか。
そんな事情もあって、宇佐野が困っていたらつい手をさしのべたくなってしまう。
もちろん、由依や双葉の方が優先だが。
なにはともあれ、今日は双葉に楽しんでもらえたようでよかった。
キャットミーランドでもそうなってほしいものだ。
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