9章:ラブレターフロムギリシャ(28)
◇ ◆ ◇
ハーデースとの一戦から明けて翌日。
オレと由依は兵士達に見送りをされていた。
「なあボス、北欧組織に入ってくれよ」「そうっすよ、一緒に日本と北欧を護りましょう」「北欧は美人多いっすよ」
兵士達がみな、オレを引き止めようとしてくれる。
最後の一人には、由依が凄い目で睨んでいたが。
「私からも頼む」
「「「ああ!? お願いしますだろ!」」」
相変わらず偉そうな鉄岩には、兵士全員からツッコミが入っていた。
どうやら、オレと由依にした扱いのことを聞いたらしい。
完全に目の敵にされている。
兵士達は土産に靴下やら薬莢やらレーションやらをくれようとしたが、丁重にお断りしておいた。
島には私物をほとんど持ち込んでないのはわかるが、さすがにいらない。
かわりと言ってはなんだが、今回の報酬に二つほどもらっておいた。
一つは、適応者のいなかったカチューシャ型の神器レプリカである。
今回の訓練に北欧組織から持ち込まれていたものの一つで、今まで組織内で誰も適応できた人がいないというものだ。
もう一つは、『核』の残骸だ。
こちらはもらったというより、こっそり拾っておいたという方が正しいが。
ヴァリアントを発生させるほどの力は残っていないが、それでもかなりの魔力濃度だ。
この島に来て、グングニル以外の神器レプリカを見て気付いたことがある。
由依の神器だけ、他と比べて出力が高いのだ。
オレが最適化する前の状態と比較してもだ。
核の残骸を入手してわかったのだが、どうやらグングニルには、核の残骸が使われているらしい。
グングニルを特別視する兵士がいたのはこのためか。
そういえば、カグツチも由依の黒タイツを脱がそうとしていたが、何か知っていたのかもしれない。
グングニルに使われている核の残骸は極めて微量で、神器から分離は不可能だ。今更ヴァリアントがアレを欲しがる理由があるとも思えないが……。
ともかく、報酬としては十分だろう。
これが、双葉への土産になればいいんだけどな。
小さな無人島に売店なんかなかったからな。
帰還用のヘリに乗り込むと、由依はすぐに眠ってしまった。
かなり疲れているのだろう。
つられてオレもウトウトし始める。
ちなみに鉄岩は、由依の希望により別便だ。
浅い眠りからオレを覚まさせたのは、2週間ぶりになったピッチの着信音だった。
相手は双葉である。
「やっとつながった! 2週間も連絡なしに何してたのお兄ちゃん!」
無人島は衛星電話以外は圏外だったのだから許してほしい。
決して忘れていたわけではない。
ほんとだよ?
……帰ったら長い説教が待っていそうだなあ。
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