9章:ラブレターフロムギリシャ(10)
「くっ……このっ! どうなってんだ! 放しやがれ!」
腕を引こうと暴れるアクセルを、オレは片手で高々と持ち上げた。
「なっ――!? 何トンあると思ってやがる!?」
「その巨大化、ちゃんと質量も増えるタイプなんだな。周囲の鉱物を集めているのか」
「くっ……おろしやがれ!」
「自分じゃ降りられないってことかな?」
「ぐぐぐ……このガキ!」
アクセルはオレの手から逃れようと、空中で暴れているが、その手足は空を切るのみだ。
「ならば……これでも支えきれるか!」
岩に覆われたアクセルの股間が激しく輝くと、彼の体がさらに巨大化していった。
身長は6メートルを超えるだろうか。
「くらえいっ!」
オレが掴んでいるのとは逆の手が、地面をえぐるようにオレを狙ってきた。
「ぐっ……な……なん……だと……?」
オレは空いていた手で、アクセルの拳を止めていた。
そちらの手も頭上に掲げる。
驚愕するアクセルに少し口の端で笑って見せると、彼はさらに激昂したようで、全身をぶるぶると震わせた。
相手をしてやるのはこの辺でよいだろう。
オレはそのままアクセルを海へと放り投げた。
100メートルほど沖に着水したアクセルは、盛大に水しぶきをあげる。
「すげえな! なんだ今のパワー!」「どんな神器を使ってるんだ?」「あのアクセルにパワーで勝つなんて!」
兵士たちが駆け寄ってきた。
「神器は使ってない」
「かー! 内緒ってわけかよ!」「チームだろ、教えろよ」
そう言われてもな。ほんとに使ってないからな。
「チキショー! なんだ今の!」
神器を解除したアクセルが泳いでもどってくるなり、オレにつめよってきた。
「あんたがあまりに強そうだから、つい力が入っちまったんだ。次はあんたが勝つさ。これからもよろしくな」
今にもオレに掴みかかりそうだったアクセルは、その手を上げたり下げたりしている。
「はっはっは! こいつはボーイの勝ちだな」
教官が豪快に笑いながら、オレの背中をバンと叩いた。
「お前も、カズくらい大人な対応できるようになれよ」
「ほっといてくださいよ!」
不満そうに口を尖らせるアクセルだったが、それを見た兵士達は豪快に笑っている。
由依もすっかり人気者になっているし、とりあえずは上手くやっていけそうかな。
やはり脳筋達には、パワーを見せるにかぎる。
ここまでお読み頂きありがとうございます。
続きもお楽しみに!
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