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9章:ラブレターフロムギリシャ(6)

 ヘリで到着した無人島は、5km四方ほどの大きさだった。

 島の中央部は小高い丘になっているが、植物は少なく、鹿など大きめな生物はいないようだ。

 目立つものといえば、ヘリポートにもなっている二階建てのコンクリートの建物くらいだ。

 これが訓練中の宿舎だろうか。

 建造物があるということは、なにかとこの島は『組織』に利用されているのだろう。

 常駐している人はいないと聞いているが。


 オレと由依が建物内のホールに入ると、そこには二十人ほどの男女がいた。

 二十代前半から三十代後半がメインで、二割ほどが女性だ。

 みな北欧風の軍服を着ている。


 彼らが今回の作戦に参加する者達か。

 どうやら軍人として扱われているらしい。

 世間にはどういった仕事をしているかまでは公表されていないだろうが。

 政治とは裏だけで繋がっている日本とは対象的だ。


 鉄岩が彼らを『兵士』と呼んだ時は、戦う道具として見ているからだと思ったが、どうやら本当に軍人らしい。


「キミ達がスポンサー紹介の戦士達か」


 一歩前に出たのは、四十代前半のがっしりした禿頭の男だった。

 立ち位置や他の連中の視線からして、彼がリーダーか教官だろう。


 鉄岩はスポンサー扱いされているのか。


 なお、使われている言語は英語だ。


「戦士かはともかく、おそらくそれですね」

「ふむ……。私が訓練の教官を務めるベルトルドだ」


 オレが流暢な英語で返したことに男は少しおどろいたようだが、右手を差し出してきた。

 記憶定着を始めとしたいくつかの魔法を使えば、言語の習得などさほど難しいものではない。

 ちなみに由依は、もともとネイティブなみに扱える。


「よろしく」


 その手を握り返すと、ベルトルドはかなりの握力でオレの手を握ってきた。

 普通の高校生なら、骨が折れてもおかしくないほどだ。

 もちろんオレは平気だ。

 ここで握り返してやってもいいのだが、こういう脳筋タイプにいちいち張り合うのもめんどうだ。

 あまりにからんでくるようなら、実力をはっきりさせる必要はあるだろうが。


「ほう……」


 ベルトルドはそんなオレの顔を見てと呟くと、手を離した。

 続いてベルドルドは由依とも握手をかわした。

 最初は眉をひそめた由依だったが、手に魔力を集中し、力強く握り返していた。


「なるほど……。本日から訓練に参加ということでかまわないな?」


 ベルトルドはオレと由依を交互に見ながらニヤリと口の端を持ち上げた。


「かまわない」


「教官! 子供を参加させるってマジっすか?」


 隊員の一人が嘲りの籠もった声をあげた。

 歳は二十代後半、金髪碧眼のイケメンだ。


「実戦でヴァリアントを倒したことがあると聞いている」


 教官が少し意地悪げな笑みを浮かべて言った。

 さっきの握手でオレ達を認めたからなのか、まだ侮っているからなのかは微妙なところだな。


「どうせ1体とか2体でしょう? オレはこないだ10体目をやりましたからね。しかも三人という少人数で!」


 今の自慢だけで彼らのレベルが推し量れる。

 初戦での由依や、日本組織の様子を見るに、彼らがエリートであることは確かなのだろう。


「貴様ら、子供に足をすくわれるなよ」

「ぎゃはっはっは! これでも北欧組織トップクラスのチームですよ? 日本の高校生ごときに負けやしませんて。なんなら勝負してみますか?」

「ふむ……面白いかもしれんな。交流をかねてやってみるか。カズにユイだったか、着替えは?」


 オレ達に拒否権はないらしい。

 勝敗はどうあれ、こちらの実力をみておきたいというところか。


「必要ないよ。オレ達はいつも普段着で戦っている。むしろ軍人じゃないんでね。軍服はかんべんしてほしい」


 オレはジーパンにTシャツ、ユイはいつものミニスカートに黒タイツとTシャツだ。


「こいつはアクセル。見ての通り血の気が多くてな。だが腕は確かだ。実力を見せてくれ」


 紹介されたアクセルはニヤニヤとこちらを見ている。

 完全になめられてるなあ。

 でかい態度をとって恥ずかしい思いをするのはそちらだと思うのだが。


「さて教官、勝負はいつもので?」

「そうだな、全員外に出ろ!」


ここまでお読み頂きありがとうございます。

続きもお楽しみに!


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