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8章:ブラッディドリーマー(8)

「ご協力頂ければ、模擬店でこちらのお店を宣伝させて頂きます。

 それと、このフライヤーを引き延ばしたポスターをこちらのお店に飾らせてください。

 模擬店にお客さんを呼べるのと同時に、地元の学校に貢献しているとして評判も上がると思います。

 ポスターには『学園祭に協力しています』と文字を入れさせて頂きます」

「この写真のポスターを? う……うむ……」


 こんなにも由依の体に惹かれている人に写真を渡すのは、ちょっと嫌になってきたが、ここはしょうがない。


「わかった。協力しよう」

「「ありがとうございます」」


 オレと宇佐野はそろって頭を下げた。


「クラスでもこのお店を宣伝しておきますね。店主さんも良い人だって」


 店を出る時のヨイショも忘れない。




「あの店主さんと交渉するなんてすごいね」


 宇佐野が前髪の奥から上目遣いに見つめてくる。


「飲食店だとチェーン店はライバルになるけど、食器関係は客を食い合うことはないからな」


 あの食器店がユリミラの店長の行きつけであることは調査済みだ。

 逆に、食器店の店主もユリミラに通っているらしい。

 ならば商売的な付き合いもあるだろうという計算もあった。


「それにこのチラシ、すごくセンスいいよね」

「ソフトの機能が足りなくて苦労したけどな」


 センスは未来で見たチラシやポスターの記憶を参考にした。

 ブラックリーマン時代は、見た目に気を遣った資料作りをやらされたこともあったからな。

 デザインのプロには敵わないが、それなりの見た目にはなっているはずだ。


 そんな調子で、学園祭実行委員であるのを良いことに、クラスへのスポンサードを四店舗ほどとりつけた。

 中でも大きかったのは、手芸屋さんから制服の素材を入手できたのと、印刷屋さんにポスターの割引をお願いできたことだ。


 もちろんポスターを貼ってもらうだけで、ユリミラの売上が二倍になるわけではない。

 そこはもう少し手を考えてある。


「難波君、本当に高校生……? なんか、先生より頼りになるんだけど……」


 たしかに最初の高校生だった頃は、こうして校外の人と交渉するなんて発想自体がなかった。


「大人に頼らないとやりたいこともできない高校生だよ」

「普通の高校生はそんなこと言わないと思うけど……。ううん、難波君がいてくれてよかった。私一人じゃきっと何もできなかったよ」

「そんなことないさ。宇佐野にはやってほしいことがあるからな」

「私に? できることなんてあるかな……」

「パソコンの扱いが上手いだろ?」

「好きでいじってるだけだけど……」

「それで十分だよ。その能力は将来絶対役に立つし、何より今必要だ」

「そうなの……?」


 相変わらず前髪に隠れて目は見えないが、声音に少しだけ喜びが混ざった気がする。


「具体的に、何をすればいいの?」

「ホームページを作ってもらう」

「そんなの作ったことないよ? ためしにHTMLをいじってみたことはあるけど……」

「それなら大丈夫さ。作り方は教えるから」

「難波君てパソコンにも詳しいの……?」


 あと3年もすれば、そのあたりの知識は簡単に手に入るようになる。

 この頃はまだ一般的とは言いがたいインターネットだが、やがてインフラになるからな。

 アングラな雰囲気のインターネットが好きだった身としては、悲しくもあるが。



ここまでお読み頂きありがとうございます。

続きもお楽しみに!


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