7章:オレにとってはぬるキャン△(17)
魔力の通った骨の槍からの逃げ場はない。
正面から炎で焼き尽くすこともできる。
だが!
「双葉! 狭くしろ!」
「うん!」
その一言で意図が通じたのだろう。
双葉は神域絶界を、オレ達三人がぎりぎりおさまる程度に小さくした。
その範囲外となった槍は全て消え去った。
先行していた2本だけが、飛来してくるが、そのどちらもオレが素手でつかみ、粉になるまで熱で焼き尽くした。
「解いてくれ」
「うん」
双葉が神域絶界を解くと、オレ達の背後には大量の槍が刺さっていた。
やはり神域絶界の中にいると、外からはそこにいないものとして扱われるようだ。
「くっ……これは計算外だ。逃げ――」
千花がきびすを返そうとしたその瞬間、オレは彼女に肉薄し、その首を切り落していた。
「バカな……速すぎる……貴様いった――」
最後まで言わせることなく、オレは千花の首と胴体を焼き尽くした。
今回は自分で限定結界を作り、炎魔法を使ったが、神域絶界があればそういった心配もなくなる。
双葉を戦いに巻き込むのは本意ではないが、放っておいても首をつっこむだろう。
なぜなら、立場が逆ならオレもそうするからだ。
大事な兄妹だからな。
なにより、最初の人生でオレを護ってくれていたのは、おそらく双葉だったからだ。
「不思議……この技を使うと、なんだか温かい気持ちになるの」
双葉は自分の胸に手を当てて、小さく息を吐いた。
スサノオの死に際を思い出すが、オレからは何も言うことはできない。
それがスサノオの望みであったし、その方が双葉にもよいと思うからだ。
「でも……あれ……? なんだか目の前が白く……」
ふらふらとオレにもたれかかった双葉はそのまま気を失った。
魔力の枯渇である。
いくら肉体と魂に適性があっても、魔力の絶対量が足りない問題は解決しない。
当分はオレと一緒に使う方が良いだろう。
技の特性を考えると、術者にバフをかけることもできそうだが、そのあたりは訓練を積むしかないな。
それにしても、双葉がこの技を使えるようになってよかった。
ピンチになっても、自身の安全を確保することができるからだ。
同種の技を破れるような神族が現れない限りはな。
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