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乾燥痴態

作者: 昏虐 正念

 昼休みにトラックで学校にやってくるパン屋のパンを先に全部買収して、3割増くらいで売り捌いてやろうぜ、という彼女の言葉に、たぶん意味はない。


 現実味が無い、と僕は反論した。


 乾いた風が吹いている。外の華やかな話し声が蛍光灯の消された教室に届いてくる。


 だから、おまえはつまらないんだ、とでも言うように彼女は溜息をついた。


 溜息とは何だろうか。溜息をつくと、疲れているのかと問われたことがある。溜息をついた人は、なぜ疲れて見えるのだろう。それは疲れて見えた人の主観的感覚ではないか、疲れて見えた人は疲れたときに溜息をつき、疲れているのかと問われたに違いない。疲れて見えた人は、きっと、そのときの自分が疲れていたのだ。


 僕は彼女の真似をするように溜息をついた。彼女の視線は、窓の外に向き、どこか遠くの方を見ているように、みえた。もうすぐ昼休みが終わる。


 僕の溜息は彼女にどのように映ったのか、わからない。そも見ることすら、されていない。


 彼女は遠くを見たまま、呟いた。昼休みにトラックで学校にやってくるパン屋のパンを先に全部買収して、2人で全部食べようぜ。


 現実味がない、と僕は反論しかけた言葉を飲み込んで、別の言葉を探した。


 明日こそは買えると良いな、パン。


 彼女は外を見たまま、静かに頷いた。


 乾いた風が吹いている。

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