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覚醒 はじめての共同作業

「ちょっと~。何なのこれ~。聞いてないよ~ 」


 鬼の群れに追われなから彼女が叫ぶ。


 黒髪が風になびいて美しい。


「なんか、余裕かましてるけど、おいつかれちゃうじゃない~ 」


 困った顔も可愛い。


「なんとかなりますよ。南美波さん 」


「だ~から~。フルネームでよふなっつうの。前から読んでも後ろから読んでもミナミミナミなんてはずかしいったらないわ~」


 ぼごっ!


 鬼から逃げながら、僕に蹴りを入れる。


 痛いけど痛くない。


 彼女の蹴りだから。


「なんか、にやけてて気持ち悪いんですけど~ 」


 両手両足を前後に思い切り振り全速力で走る彼女。


 ずっと、聞いていたい素敵な声だ。


 そして、素晴らしいフォーム。


「なんで、よりにもよって 私が素人のあんたとくまなくちゃいけないのよ~ 」

 

「いやあ~。すいません 」


全速力で彼女の隣を走る。


 う~ん。

 

 可憐な香りが心地好い。


「あたしの、臭いを嗅ぐなっていうの~! 」


 彼女の右パンチが、僕の左頬に突きささる。


 痛くない。


 むしろ嬉しい。


 彼女の肌と直接ふれあってしまった。


「あんた、ふざけてるとほんとに死ぬからね! 」


 もののけどもに殺されるのか、彼女に殺されるのか僕にはわからない。


 いや、どっちでもいい。


 彼女と一緒に死ねるなら。


「くそ~! あたし一人だったら逃げ切れるのに~! あんたなんとかしなさいよ~! 」  


 な、なんと。

 

 今日は、素晴らしい一日だ!


 初めての接触!


 そして、初めて彼女に頼られた!


 男として認められたんだ!


 あやかし狩りにきて良かった~


 狩り方知らないけど。


 

 そう、僕は彼女恋している。



浄壁(じょうへき)


 彼女が振り向き両手を前につき出す。

 青白い光の壁が僕の後ろに出来るの。 


「呆けてんじやないわよ! 」


 もののけどもは壁に当たると、電気に打たれたように後ずさる。


「全くなんて役立たずなの! 」


 まだ、使ってないのにその言葉はぐさりとささるな。


 それだけ期待してくれてるってことか。


 嬉しい。


 もののけどもは、突然現れた壁にビックリして足を止めた。


「南美波さん!すごい! 」


 ばごっ!


 彼女の左足が僕のふくらはぎを蹴る。


「だ~か~ら~・・・フルネームで呼ぶなっつうの!ミナミでいいから! 」


 やったー!


 美波さんって、名前で呼んでいいなんて~


 よし、男になるときは今しかない!


 僕は全裸になり、腰を彼女につき出す。


「な、なにしてんのよ・・・あんた、変態なの!しかも、こんな時に・・・死んじゃいなさいよ! 」

 

 顔を赤らめたじろぐ彼女。


 清楚だ。


「速く、しまいなさいよ~! 切っちゃうからね! 」


 うーん。やっぱり恥ずかしい。初めて女性の前で全裸になっちゃったかんな。でも、僕たちにはこれしか残されていない。


 脱ぎ捨てた洋服のポケットから金属の玉をとりだす。


「受け取って下さい。藤田先輩から、もしもの時にこれを使えって渡されました! 」


「先輩から? 」


 眉をひそめながらこちらを向く彼女。

 

 しかし、僕を見ると直ぐに顔をそらす。


「よこしなさい!」


 差し出された手のひらに金属玉をのせる。


 ほんとは、手のひらにキスしたいとこだけど。


 はうっ。


 やば、ちょっと大きくなっちゃったかも。

 

恥ずかしい。


「で、どうやって使うって? 」


「美波さんに念を込めてもらえって言ってました 」


「そう。真言は? 」


「真言? 」

 

「まったく~。ほんと素人ね。呪文のようなもの行ってなかった? 」


「呪文・・・」


ガシューーー!


 浄壁にもののけが突進してきて飛ばされるそうになる彼女。

 

「つうぅ~」


 先輩なんかいってたっけかな?


「もう、あと少ししかもたないわ! 速く思い出しなさい! 」


「導万覚醒!」


 先輩の殴り書きを思いだし咄嗟に口にした。 

 

「なるほど」


 目を細め口角を上げる彼女。


万功(ばんこう)の主たる我の導きにより、目覚めよ! 」

 

 金色の光が手のひらから発せられ、金属の玉をつつみこむ。

 

 ガシュガシャカチャ


 玉が形を変える。


 リングが何本も繋がって筒のようなものになっている。


 なるほど、簡易貞操帯だ。


 藤田先輩の言葉を思い出した。


「いいかい。これの名前は『鎮固(ちんこ)』って言って装着すると君はめちゃくちゃ強くなれる。しかし、取り外し方が分からない今のところ、今後一切エッチが出来ない身体になってしまうかも知れない。だから、使う時は良く考えて使うのだよ。

もちろん。僕は使ってくれた方が嬉しいけど。謎を解き明かす為にもね 」



「こっから、どうやって使うの? 」


 もののけの突進を耐えながら彼女が尋ねる。


 男になる!


 大好きな彼女を守るため僕は決断した。


「いいですか。これから言うことはおふざけでも僕の欲求の為でもありません。僕の言う通りにしてくれれば絶対に僕たちは助かります。僕が守って見せます 」


「ごちゃごちゃうるさい!なんでもするから速く言いなさい! 」


 苦しそうに顔を歪めながら彼女が叫ぶ。


 ブモ~ンンン


 もののけたちが騒ぎ出す。


「それを、僕のあそこ!いっ、いちもつに差し込んで下さい! 」


 腰をつき出す僕。


「出来るか~! 」


 間髪入れず答える彼女。


 ですよね~。


 ズシャシャシャシャ~!


 もののけの体当たりでかべにヒビが入る。


「え~い。いきてかえったら絶対殺してやる。ちょんぎってやるわ! あんたなんか、奴隷よ!いや、奴隷以下よ! 」


 勢い良く僕のいちもつに鎮固を差し込む彼女。


 同時に壁が破られ、もののけの爪で彼女の上着が破られる。


「いたた~! 」


 破れたところから、ちょつとブラジャーの紐が見えている。


 こんな時に不謹慎だが、凄くエロい。


 清楚な彼女のチラリズム。


 ごちそうさまです!


 もののけから彼女を守るように立ちはだかる僕。


 ゆっくりと時が流れる。


 もののけの動きが超スローになった。


『おめえが、新しい装着者か。なるほど、なかなか食べごたえありそうな煩悩だな 』


 ぼ、僕のちんこがしゃべっている。


 いや、鎮固がしゃべっている。

 

『俺がおめえの煩悩を食って、力をおめえに与える。分かりやすくいやぁそういう持ちと持たれずの関係ってやつよ。よろしくな、相棒 』


 聞きたい事は、山ほどあるが取り敢えず今何とかしてもらおう。


『おうよ。今日は覚醒記念ってやつだな 』


 なんとなく、戦い方が頭に流れ込んでくる。


 さあ、行くか!


 「鎮固覚醒! 」


 身体が金色に発光し始める。

 金色の体毛が身体中から伸び、僕は大猿の姿に変身した。


「うっきい! 」


 掛け声で気合いを入れ息を吸い込み叫ぶ。


「斉天の咆哮~!! 」


 吸い込んだ息を思い切り吐き出しもののけたちにさけぶ。


 僕の口から衝撃波が放たれもののけたちを吹き飛ばす。


「今のうちに逃げましょう 」


 僕の差し出した手を取り起き上がる彼女。


 彼女を抱き抱えもののけと反対方向へ飛ぶ。


「もう、大丈夫ですよ」

 

「あぁ、ありがとう。あんた凄いんだね・・・ 」


 どうやら、僕たちは生き延びる事が出来た。


 なんも、出来なかった僕だけど、この力があれば彼女の側にいられる。


 凄いって誉められたしね。


「キモいけどね 」


 気持ちのこもらない声で彼女が言った。

 

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