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リックは目を見開いた。

今まで大好きだ、特別だと言ってはくれていたが、あくまで人としてのこと。

仲間から告白されかけても気づかないような、ある意味たちの悪いくらい鈍感なレティが。


(嫉妬……した?)


「リック様といると暖かくて胸がキュッと締まるけど、でも心地良くて。そんな気持ちをくれるくらい、リック様は優しくしてくれるのに、……リック様の側に女の人がいると苦しくなってしまいました。私が私でなくなるみたいで怖いんです」


レティはふるっと肩を一度震わせた。

島を出てストレスが減り、料理長ジャンの気遣いもあって、体はまだ痩せぎみだけど顔色は良くなった。

そんな彼女の顔が真っ赤に染まっている。


「リック様のお側にいるのは私だけでいたいと思ってしまって、そんな私はわがままなんです。お側にいる資格もないんです……」

「そんなことない!」


思わず大きな声を出してしまった。

レティはどうしていいか分からない戸惑いの表情でリックを見る。

全く恋愛経験のないことが、レティの口から心の内の素直な気持ちをつかせた。


それはなんて、愛しくて愛しくて甘く蕩けるような気持ちを生み出すのだろう?


リックは走り出していた。それに驚いたレティが荷物を取り落とす。

抱き締めようとしたら、まさかの抵抗にあった。


「レティ、何で」

「いけません、リック様!」


目を閉じて肩を押すレティ。今度の表情は痛々しくて。


「私は……っ!ジョアンおじ様の前の方に……、毎日無理矢理裸にされていて……」


肩を押し返す力が抜け、腕を伝って落ちていく。

レティはペタンと座り込んだ。


「身体中を触られていたみたいなんです……!この間の黒船に連れていかれたときも、……本当は、服を脱がされそうになって……。私、私……っ」

「もういい、レティ」

「よくありません。こんな私、リック様を汚してしまいます……っ」


リックは床に片方の膝を着いた。下を見るレティの頬を触れば、手が湿った。

そのまま上に向けさせたら、閉じていた瞼が上に上がる。

怯えるような藍の光の中にリックがゆらゆらと映る。


「リック様……っ」

「側にいろ」


真剣で強い力を瞳に込めて、リックはレティに言った。涙溢れる両方の目にそれぞれ口づける。


「いいか、レティ。相応しいかそうでないかは関係ない。誰を自分の側に置くかは俺が決める」

「リ……ック様……っ!リック様、リック様っ。お側にいたいです!ずっとずっとリック様の……っ」


レティの言葉が途中で切れた。リックが唇で塞いで飲み込んでしまったからだ。

アプリコットブラウンのふわふわした髪ごと頭を支えるように、何度も何度も角度を変えて、たまには啄むようにして触れるだけの軽い口づけを与える。

驚いて目を見開いていたレティも、そのうち甘い感触に酔いしれて瞳をゆっくり閉じるのだった。



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