加速する初めての気持ち4
「――ユース、ユース」
ディノスに声をかけられて、ユーシュテが目を覚ました。
「……うーん、何?」
「レティアーナが帰ってきてない」
ガバっと即座に起き上がり、時計を見る。七時になる数分前だ。
「お風呂に行くって言ってたけど、まさか考え事してひっくり返ったりしてないかしら」
「見に行こう」
既に着替えていたので、ディノスはユーシュテを肩に乗せて部屋を出た。
風呂場に向かい、ドアを叩く。
「レティアーナ!いるか?」
返事がないので、ユーシュテが飛び降りた。
「あたし見てくるから、そこにいて」
ディノスが開けた隙間から、小さな体が入り込む。
中の戸も開く音がして、それからユーシュテの声が返ってきた。
「いないわよ?食堂じゃない?」
二人が寝ていたので、遠慮して先に行ったのかもしれない。
ユーシュテは再びディノスの肩に乗って、一緒に食堂へ向かった。
食堂へ行って中に入ったが、レティの姿は見えない。そこへリックが来た。
「何やってんだ?入り口で止まってたら邪魔だ」
「レティ、そっちに戻った?」
「お前が返さないっていったんだろ。戻るわけがない」
ディノスとユーシュテは顔を見合せた。
「俺の部屋から出ていったきり、姿が見えないんだ」
「あ?」
ディノスの説明を聞いたリックの表情が険しくなる。
文句を言おうと口を開きかけたものの、止めた。
「侵入者が入って分からないわけがない。いくらなんでも気配は分かる。だから船のどこかにいるか、あるいは……」
「レティが黙って出ていくわけがない」
「それは願望?」
「……ユース」
ユーシュテが意地悪な顔で、質問を投げ掛ける。
咎めるようなディノスの声がしたが、リックは落ち着いて答えた。
「信じてるからだ。レティは心配をかけるようなことはしない」
「あっそぉー」
ユーシュテは面白くなさそうに言う。
リックについていき、ディノスが思い当たる部屋を開けて回る。
「ねーえ?二手に別れた方が早くない?」
「その必要はない。レティの気配がこっちにある」
リックはスタスタと進む。足を止めたのはこの間ユーシュテと片付けをした書庫だった。
周りはクルーの部屋で、ならばレティが入りそうなのはここだろう。
「レティ。いるか?」
リックが声をかけると、パタパタという小さな足音とドアに何かが当たる音がした。
「開けるぞ」
ドアノブを掴むが、下に降りない。
軽い力で開けられなかったので、力を込めれば恐らく押し開けられはする。
「レティ?」




