焼け焦げる胸と芽生える感情6
「ったく。女に脅しかけてまで言うこと聞かせようなんて……」
背中に片足を乗せたユーシュテが言った。
どうやら飛び蹴りしたようだ。
「うっ……」
男が呻き、ユーシュテに恨みがましく目を向ける。
見上げたその時に、頭上の短いスカートの中のレースに隠れたものを目にする。
「黒か」
ユーシュテの頬が真っ赤に染まり、目がつり上がる。
「目ぇ潰すわよ……」
赤い靴の太いヒールをグリグリと容赦なく男の頬に食い込ませた。
「ユース!」
ディノスの鋭い声が飛ぶ。ユーシュテが顔を上げたら、此方を睨み付ける男達が囲んでいる。
「てめぇら、余所者だろ。人の縄張で何目立ってんだ?」
「あーもう、面倒ね」
男から降り、ユーシュテはスカートを少し上げる。
白のニーハイソックスの上の艶かしい太股に黒いベルトが嵌まっており、短剣がついていた。
それを抜き取る。
「レティ!こっち来なさい!」
ユーシュテが呼ぶが、レティは上半身を起こすのが精一杯で腕が震えて腰を上げられない。
「片した方が早そうだな」
「そうね」
ユーシュテとディノスが背中を合わせる。
「俺が大方何とかするから、ユースは無理するな」
「わかってる!」
ディノスは荷物を置き、上着の中から銃を取り出す。
相手の足が動いたと同時に銃を放つ。
相手はただのチンピラなので、肩や腕を狙って攻撃をした。
弾が切れて入れ換えをするときに地面に膝をつき、ユーシュテが肩に足を乗せる。
踏み台にして飛び上がり、上からチンピラの首に剣を突き刺した。
飛び退く頃には弾込めが終わり、ユーシュテに飛びかかる男が全員足を撃たれて終わった。
「おっ……覚えてろォ!」
ありきたりな捨て台詞を吐いて、全員が支え合いながら立ち去った。
「大丈夫か?」
レティの腕を掴み、ディノスが引っ張り上げようとすると払われた。
「いやあああっ!」
「え!?」
荷物を拾っていたユーシュテが驚いて、レティを見る。
「ごめんなさい、ごめんなさい!」
「レティアーナ!?」
座り込んだまま、縮こまって頭を抱えてしまうレティ。
「大丈夫だ、レティアーナ。もう終わった」
「いや……っ」
ディノスが落ち着かせようとしても、手で押し退けられてしまう。
「ディノス、ちょっとあたしに任せてくれない?」
ユーシュテがディノスの肩に手を置く。ディノスが下がり、ユーシュテが膝をついた。
「レティ」
ユーシュテは手を広げた。
それから下を向いたままのレティの顔の前で、わざと勢いよく手を叩いた。パンッ!
良い音がして、レティの肩がビクッと揺れた。
「あたしよ」
レティが顔を上げる。乱れた髪の合間から怯える瞳が、ユーシュテを映す。
「ユース、ちゃ……っ」
震える指先がユーシュテの腕にすがった。
「私、私……っ」
しゃくり上げて、柔らかい胸に飛び込んだ。
嗚咽して泣くレティの頭を撫でながら、ユーシュテは呟く。
「一体どうしたって言うのよ、レティ……」




