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焼け焦げる胸と芽生える感情5

ポロポロと涙が落ちた。


いつだってリックはレティに優しかった。

気にかけてくれたし、側にいてくれた。


(だけど、私はリック様の彼女じゃない)


契約の元、船においてくれてるだけで。

クルーの一人だから助けてくれる。

ただそれだけの関係。


(リック様が誰と一緒にいても、私には関係ないの。関係ないことなの)


だけど。


(あのままリック様が戻ってこられても、きっと普通でいられない)


そう思ってレティは思い出した。船に乗る前、島でリックに腕を絡める女の人を見たときも心がチクリと痛んだことを。


(私、わがままだ。あれだけリック様に優しくされて、まだ何か足りないと言うの!?こんな私、見せたくない)


「ユースちゃん、ごめんね」


震える声で言い、レティはその場を飛び出した。


「待ちなさい、レティ!」

「ユース、追うぞ!」


ディノスは代金をテーブルに置き、荷物を持ってレティを追いかけた。


心の乱れているレティは周りを見る余裕がない。

どこを目指すわけでもなく、一心不乱に走っていく。

そして途中でちょっとした石畳の凸凹に爪先を引っ掻けて、大きく前のめりになった。


そのまま前を歩いていた人に顔をぶつける。

レティの頭に冷たいものが掛かった。同時に、頭上から大きな声が降ってきた。


「痛ってぇ!このアマ、何すんだよ!しかも、コーヒーが落ちちまったじゃねぇかよ」


レティは両手で顔を押さえ、色んな意味の痛みを堪えて謝罪した。


「本当に申し訳ありません。おケガは……」


震える声で言うレティを見下ろした体格のいい男。じっと見られてレティはたじろぐ。


「随分な童顔だが、悪くないな」


太い指がレティの腕を掴んだ。


「本当に悪いと思ってるなら、ちょっと付き合え」

「え、でも……っ」

「つべこべ言わずに付いてこい!黙って言うことを聞いてりゃ良いんだよ!」


怒鳴られてレティの肩が跳ね、表情が強ばる。


『大人しく言うこと聞け!』


頭の中に響く言葉。幼い頃の恐怖の記憶。

腕を引かれて無理矢理進まされかけたとき、背後から男に何か突っ込んだ。


「手を……放せぇーっ!」


男の背中に白い足が食い込み、吹っ飛んだ。腕を掴まれていたせいで、レティも地面に倒れた。





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