焼け焦げる胸と芽生える感情3
港町は非常に賑わっており、リックから離れてレティは走っていく。
住んでいた島の港町とは規模が違う。
広場には噴水、その前ではたまたまジャグリングをするピエロがいた。
至るとこに店が敷き詰められ、所々にベンチがある。
カフェは外のテラスにまでテーブルを広げているし、きちんと手入れされている花壇や植木が綺麗に街を彩っている。
「リック様っ!すごく賑やかですっ!」
嬉しさ溢れる証拠に、レティはくるりと一回転した。ワンピースの裾がふわりと揺れる。
「レティ、今日は先に買い物をしよう」
「何を買うんですか?」
「レティの服だ」
「え!?持ってきたのが有りますよ?」
「三、四着を着回しているな?もう少し持ってても良いだろう」
リックはよく見ている。
「もう少し多くを着せてやりたいと俺が思うんだ」
レティが遠慮して悪いと思わないように、リックは上手く言ってくれた。
「ありがとうございます」
彼の優しさを素直に受け入れ、レティはお礼を言った。その後、街で一番大きな店に入った。
「これなんかレティに似合うんじゃないか?」
「えっと……」
Vの字に深く開く首元。肩のところは紐になっていて、首の後ろで結ぶようになっている。スカートは二段になって黒くシンプルなワンピース。
「ちょっと……恥ずかしいです」
「そうか」
さっきからリックが勧めるものは、短パンやミニスカート、今のワンピース。
スレンダーなレティだからこそ着られるようなものだが、着た後に落ち着かなくなりそうだ。
レティ本人はTシャツにジーンズを持ってくるから、問答無用で却下されていた。
よくよく聞いたら、今のワンピースは島の店のセール期間にジョアンが買ってきたらしい。
二人で悩んでいたら、リックが窓の外に目を止めた。
「他の意見も聞くか」
レティを店に残し、リックが一度外に出る。数分後に誰かを引き連れてきた。
「何であたし達がリチャードの買い物に付き合うのよ!」
「そう言ってやるな、ユース。明日もまた出掛けられるだろう」
リックに噛みつきながら、大きくなっているユーシュテとディノスが入ってきた。
「悪い悪い。レティに買ってやる服が決まらないんだよ。俺はこう言うのがいいと思うんだが」
リックは先程の黒いワンピースを見せた。
「ちょっと地味じゃない?色が。ダメよ」
「大人っぽいとは思うが、レティアーナがそういうデザインの服で船をうろついたら、怒るのはお前だろう、リック」
ユーシュテとディノスの意見を聞き、リックは想像する。
無駄に短いスカートでクルーの視線を集めると思ったら、気が気じゃなくなるのは確かだ。
「俺はこんなのが似合うと思うぞ」
ディノスが取り出したのは、袖の膨らんだ白いワンピース。
腰にリボンが付いており、後ろで結ぶ。スカートの丈は膝下だ。
「可愛いな」
リックが同調すると、ユーシュテがバッサリ切った。
「そんな一昔前のお嬢様みたいな格好却下よ!動きにくいでしょ!他のにして」
「これはどうだ?」
リックはマネキンが着ていた服を指差す。
膝丈で明るいイエローのワンピース。
「それ、ドレスでしょ?」
「俺ならこれだな」
ディノスは、淡いピンク基調でフリルがたくさん着いたレースのものを引っ張り出す。
「それ完全にドレスだから!花嫁か!」
ユーシュテが突っ込みを入れ、憤慨した。
「いい加減にして!あんた達日常とレティのイメージを総合した上でのセンスがなってないのよ」
レティはユーシュテに腕を掴まれて引っ張られた。




