狙われた歌姫と現れた鳳凰5
下着だけを身に着けたレティは、すぐに黒船で見つかった。甲板から離れた上空に浮いている。
知らせを受けたアイトールが甲板に走って入ってきた。
「船長!ここからでは届きません!」
「チッ」
レティは空を見上げ、スッとゆっくり上へ昇っていく。
「私には……あの人だけ……」
意識か無意識か。レティはうわ言のように呟きを繰り返す。
「逃がさんぞ、歌姫!」
アイトールは口を開けて舌をベロリと出した。
そこに小さな魔法陣が浮き上がり、足元にも同じ模様の大きなものが出た。
紫色の光が出て、アイトールが唇を舐めた後に叫ぶ。
「カメレオン!」
息を吸い込み、吐き出すと毒が含まれているのかと勘違いするような紫の煙が吐き出される。
それは大きな生物を象り、クルクルと回転してカメレオンが飛び出した。
カメレオンはマストに降り立つ。
「彼女を舌で捕らえろ!」
ギャギャアア!アイトールの命令に従ってカメレオンの舌が伸びる。
下の様子に気がついていないレティの腰に巻き付き、強制的に動きを止められた。
レティは緩慢な動きで自分を捕らえる生物を見た。
「はな……し……て」
呟きに呼応し、レティが眩しく光った。驚いたカメレオンの舌が離れる。
その後、船体がメリメリと音をたてるのに、クルーもアイトールも慌て出した。
「何だ?」
「私に……近づかないで……」
バキッ……バキバキバキッ!金色に光るクリスタルのように、透き通った柱が船を突き抜ける。
それがひとつでは終わらず、四方八方から突き出た。
しばらくすると海までも金色に光り始め、光の線がレティに集まった。
流れ星を思わせる閃光がおさまったとき、クリスタルが星のようにレティを包み、その主体を支えるように柱が四本立っていた。
「ただの歌の上手い女ではなかったと言うことか。あの姿の何と神々しく美しいことか……。あれこそが世の海賊が求める『楽園の女神』か!?」
アイトールはニヤリと笑う。
「あれを破壊しろ!」
カメレオンは舌を伸ばすものの、触れるどころか星に弾き返される。
「ただでは手に入らんか」
アイトールが拡声器と繋がるマイクを取った。
『ならば全員攻撃用意!この船の全攻撃を尽くしてあれを破壊せよ!』
大砲、銃、弓。様々な武器の矛先がレティへ向いた。




