揺れるのは周りの心ばかり?
歌はキミ
キミは歌
その染み渡る響きのように
キミの心にも届いてほしい想いがある。
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それは、とある一言から始まった。
「レティアーナさん!」
洗い終わったばかりの洗濯物を入れた籠を抱え、歩いていたときだった。
クルーの一人に呼び止められ、足を止めて振り返る。
「はい、何でしょう?」
「じっ、実は……その……」
煮えきれない彼。それでもレティは大人しく言葉の続きを待っていた。
けれど籠が腕からずり落ちそうになって抱え直したら、彼が気づいて持ってくれた。
「行きながら話しましょう」
「はい。ありがとうございます」
持ってくれたことにお礼を言って、彼のあとについていく。
「レティアーナさん」
「はい」
再度呼ばれ、外に出る間際で足を止めた。
「実は、聞いてほしい話があるんですっ!」
何故か真っ赤になり、しどろもどろ気味の相手。レティは目をぱちくりさせた。
「お話……ですか?」
「レ……レティアーナさんのっ、気持ちも……知ってるけど、でも。俺がもし、その……船長と……ゲームして勝ったらっ!聞いてくれますか?」
「はい。わかりました」
レティが頷いたら、相手は手が塞がっていたので足だけでガッツポーズをして走って出ていく。
洗濯物は物干し竿の所に置いて、やはり猛スピードで走っていってしまった。
「今の、何なの?」
階段を上がってくるレティを見て、クルーのTシャツを洗濯ばさみで留めていたユーシュテが手を止め、問う。
「それが……」
レティは事情を話した。甲板が騒がしくなったのは、その数時間後だった。




