名探偵の調査といじわると副船長の秘密3
午後。山盛りのサンドイッチから好きなだけ食べ終わり、レティはまた調査に息巻き始めた。
リックは付いていこうとしたが、ディノスに呼ばれて無理矢理腕を引っ張られ、何処かに連れていかれてしまった。憐れ。
陸を歩き回る訳でもないし、船内をうろつくなら迷子になっても探せば見つかるはずだ。
それに、昼間だからクルーも行き来している。ディノスはそう考えたのだ。
それで、船長がいないと進まない仕事に連れ戻したのだ。
「次は何処を見て回ろうかしら?」
探偵が考え込んでいると、背中に何かがぶつかってメモが床に落ちてしまった。
「あっ、すみませんっ!」
すぐに声がして振り返った。畳まれた洗濯物を持ったクルーが、申し訳なさそうな顔で立っていた。
成る程、積まれた量から見ても前が見えなかったのだろう。
「大丈夫です」
にっこりと答え、レティは洗濯物を見上げた。
「たくさんですねぇ?」
「これ、今からシーツを変えて回るんですよ」
「じゃ、手伝います」
レティはメモをポケットに滑らせて手を出したら、後退りされた。
「手伝いはありがたいですけど、これめちゃめちゃ重いんで、女性が持つなんて無理っすよ。一緒に回りましょう。自分がいる隣の部屋を変えてもらうと助かるんで」
「分かりましたっ」
クルーと一緒に変えて回る。すると、リックの部屋ではないのに、同じくらい大きな部屋に着いた。
「そっち、副船長の部屋なんすよ。一人で入れる?」
「大丈夫です」
「そしたらえーと、副船長のは……これこれ」
淡い黄色のシーツと枕カバーが手渡された。レティはそれを持ってノックをした。返事がない。
(どうしよう)
「ノックの返事がなくても入っていいぞー。副船長は忙しいから、部屋にいらっしゃらなかったりするんだ」
開いたクルーの部屋から迷いに対する答えがあったので、中に入った。
「お邪魔しまーす……」
中は薄灰色の床で、リックの部屋にはふわふわ踏み心地のいい絨毯があるのに、ここにはそれがない。
(やっぱり……)
本棚は背表紙の高さがきちんと左から右へ揃えられている。それも全ての段にだ。
ベッドにも皺があまりない上に掛け布団は足元に畳んでおいてあり、枕もそこにある。
このきっちり具合が、彼の性格をよく表していると思った。
レティは手早くシーツを変え、皺をより丁寧に伸ばして掛け布団を元の場所に戻した。
帰ろうとしたら、ふと机に真っ直ぐおいてある本に目が行った。
「これ……」
昨日、リックの書庫で散々追いかけ回した本だ。結局逃げられてしまったのだが。
ディノスは副船長なのだから、リックの書庫にも気軽に入れるだろうが。
(動いた本がどうしてここに?)




