名探偵の調査といじわると副船長の秘密2
「俺は抜ける。元々迷子にならないようについてただけだからな。二人もお目付け役が居れば十分だろ」
そう言って立ち去った。そしてセルフの飲み物の辺りを見ていたレティは、ようやく顔を上げた。
「ここじゃないみたいです!」
そう言って食堂を飛び出す。
「待てレティ!」
慌ててリックが追いかけた。流石にここを離れてまで油を売るわけにもいかず、ジャンは諦めた。
「船長、あと頼みましたー。結果教えてくださいよー」
なんて背後から声が追いかけてきて、全く好き勝手ばかりと眉間が険しくなる。
洗濯物の間を歩き回ったと思ったら、四つん這いになって甲板を隅々まで見て回る。
(ジーンズを履いてるからいいけど、何て格好してるのか分かってんのか?)
お尻をつきだして探偵ごっこに夢中な小さい背中を見て、片手を頭に当ててため息をつくリック。
ここは男ばかりの船の上だと言う自覚が全くない。
積み上げてある木箱まで確認して気が済んだらしい。また勝手に移動を始めて呆れつつ追いかけた。
同じ通路を何度も通ったりしながら、洗濯室から浴場、シャワー室などを見て回る。
ぐるぐる歩き回るのはまだ船内を覚えていない証拠で、目が離せない。
さっきから何かを書き込んだメモを片手に考え込みながら歩き、階段を降りる。その先は船長室だ。そこだけは何となく覚えているらしい。
船長室の手前のドアを開き、書庫に入る。
しばらく放っておいたら、結局何も見つからなかったらしい。リックの部屋に入った。
ソファに足を立てて、メモを見つめている。
「何を調べてるのか、そろそろ教えてくれてもいいんじゃないか?」
「うーん」
声が聞こえないくらい集中してるらしい。
リックはレティの前に立ってソファの背に手をつき、メモを持った手首をつかんだ。
「こーら。いい加減にしろ?」
「あーっ!もっ、もっ!リック様、放してくださいぃっ」
左手が上がったので、それも軽々掴んでアプリコットブラウンの頭の上で一纏めにしてしまった。
レティはぶーぶー言いながら、最後の抵抗に足をその場でバタバタさせている。
構わずにメモを取り上げて中身を見た。
今まで回った場所の後にバツ印がついている。
その前のページには箇条書きがあった。その内容はこういったもの。
■書庫で本が動く。
■電気が消される。
■聞いたことがないことを言われる。
■ゴミが投げられる。
■ヨーグルトのお皿がいつの間にか空になる。
■救急箱と木箱が勝手に動く。
■シーツが顔にかかる。
「何だこれ?昨日のことはともかく……」
「誰かが船内に潜んでるんです!で、いたずらしてるんですよ」
レティは「ぶぅー」と言いながら、顔を膨らませた。
「その正体を探すと言う任務中ですっ」
「任務て……」
誰から任命されたのかと言う突っ込みは飲み込んでおいた。
リックはレティの手を離し、メモを返して隣に腰を下ろした。
「もうすぐ昼だぞ。任務は一旦休憩しよう」
頭を撫でてやればコクンと頷いて、可愛いことこの上ない。ようやく心が静まるリックだった。




