歌姫さんの探偵になる決心2
誰もいないリックの部屋で、Aラインのチュニックと短パンに着替えた。
リックは寝ているときに汗をかいてそのままが嫌で、だけど朝晩入るのは面倒。
そんな理由で朝風呂に入るらしくて出ていった。
着替えてから、昨日ディノスが持ってきてくれたトレーを持って部屋を出た。
食堂までの行き方がよく分かっていなかったが、朝だから誰かに会うだろうし、そこで聞けば良いと思ったのだ。ところが。
(誰にも会わない……)
シュンという表現がよく似合う表情で曲がり角の度に左右を見ていたら、頭に手が乗った。
「リックはどうした?」
「ディノス様!」
聞き慣れた声と顔に安堵した。
「あっ、おはようございますっ」
ペコッと頭を下げたら、トレーまで下がってしまって。
「うわわわっ」
ディノスが滑るカップを冷静に腕で止めてくれた。
「おはよう。食堂ならこっちだ」
やはり沈着冷静なディノス。レティは後を追った。
すると、ポコンと何かがレティの額に当たってトレーに落ちた。
「はぇ?」
立ち止まって見たら、転がっているのはガムかキャンディーか何かの包み紙だった。
「どうした?」
「あ、いえっ」
ディノスがレティの歩みが止まったのに気がつき、此方を見ている。
この案内をしてくれる親切な彼は、ゴミを放るような品のないことを絶対にしないはずだ。
(となると、どこから来たのかしら?)
頭の中にハテナをたくさん浮かべていたものの、とりあえずディノスを追いかけた。
少し歩いたら騒がしい声が聞こえてきて、食堂に来たのだと分かった。
(皆さんごはんに行ってたから、すれ違わなかったのね)
通路に誰もいない理由に納得が行った。




