船に隠された不思議な秘密7
「レティ、まだ起きてるか?」
「はい」
「枕元の電気をつけてくれないか?」
「あっ、はい」
スタンドが置いてあったので、チェーンを引っ張って橙色の明かりをつけた。
代わりにリックが部屋の電気を消した。
「レティ」
ギシとベッドが音を立てて沈み、リックの手が頭に乗せられる。
レティは再びゴソゴソと反転してリックの方を向いた。
腰を掛けて、とても優しい目でこちらを見つめるリック。
妖艶な顔が、橙色の明かりのせいで更に美しく見えた。ドキドキしたレティは顔の半分を布団に入れる。
「少し話すか」
「はい」
布団を上げてリックが入った。
「そんなに壁側に寄らなくて良い」
背中に手を回して器用に体を引き寄せてくれた。それから空いた手でやっぱり頭を撫でてくれる。
互いの呼吸の音がこんなに近くに聞こえるなんて。
しかも、何時もと違うラフな格好をしたリックも初めてで……。
(緊張する)
そう思ったとき、リックが話そうと言ったのは緊張を和らげるためだと気がついた。
胸が暖かさで満たされる。
「レティ。レティは島の外のことをあまり知らないようだから、教えておかないといけないことがたくさんある」
「はい」
「レティは俺が連れてきたからこの船のやつは問題ないと思うが、これから行く先々では別だ」
「別……ですか?」
「騙そうとしたり、海賊のクルーだと言うだけで襲ってくる奴等も出てくる」
「騙してお金取る……、ですか?」
「金ならいいさ。この間のように人を誘拐してそのまま売り飛ばすようなこと、他にも……欲望のままに心を壊す行いをする輩もいる。レティの思いもよらない方法でな」
「……」
「だから、不用意に船員以外の奴についていくな」
「はい、わかりました」
「良い子だ。まあ、なるべく俺やディノスが一緒に行くし、そうでないときは仲間の誰かをつけるから、心配しなくて良い」
「ありがとうございます……」
段々と布団が二人の熱で暖かくなってきて、レティは小さなあくびをした。
「寝るか」
「はい。そう言えばリック様、『ちっぱい』って何ですか?」
「え?」
「書庫で電気を消されたとき、最後にそう言われたように聞こえたんです。たぶん女の人の……声で」
「何だ、それ。分からんなぁ……」
「リック様にも分からないことがあるんですね……。それじゃあ、おやすみなさい、リック様」
「おやすみ。レティ、もっとこっちにおいで。そうしたらお化けが来ても怖くないだろう」
(リック様はこの船に私以外の女の人はいないって言ってたのに、あの時聞こえた声は何なんだろな……)
うつらうつらし始めながら、レティはリックの熱が肌に感じられるくらい寄って目を閉じた。
(やっぱこんな安心されちゃあなぁ……)
複雑な思いで、寝息を立て始めたレティの髪を指に絡めたり撫でたりしてリックも目を閉じた。
(自分で一緒にいるように言ったが、生殺し状態だな)




