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つかの間の日常?2

洗濯ものが風に揺らめく物干しスペースのところから、リックがこちらを見下ろしていた。顔がニヤニヤしているので、面白がっているのが分かる。


「船長」

「リック様!」

「よっ、と」


木製の柵を軽々乗り越え、そのまま着地する。木の床と靴底が、コツンと音を立ててぶつかった。


「そこから俺たちの会話を聞き取るなんて流石」

「耳だけは自慢だからな」


片腕をレティの肩から前に回して抱き寄せ、もう一方の手はジャケットのポケットに突っ込む。


「また隠れて昼寝ですか?」

「息抜きだよ。レティは熱心に掃除してたし、ここから見守ってたんだ」

「成程」


フィルは頷いた。

レティが悪夢を頻繁にみるせいで夜中何回か起きており、フィルも彼女の体の異変には気づいていたから、リックが心配しているのは知っていた。


「でも、副船長は結構怒ってるみたいですけど」


その言葉と同時にリックの頭にゴリッと固い感触、振り返らないでもわかる怒気がした。レティは振り返ろうとするが、リックの腕や背丈が邪魔していてその後ろはよく見えない。

視線を戻すとフィルと目が合い、彼は眉を下げて困ったように笑っていた。


「……」

「気配失くして俺の背後を取るとは、流石お前だな」

「ここで油を売っているということは、仕事は当然終わってるんだろうな?」


(ようや)くディノスが口を開いた。答えが分かり切っていることを、嫌味で質問する。


「用を足すのに席を外し、戻らないままだったと思うのだが」


再度、リックの頭を硬いものが抉る。


「どうしても、お前の判断がいるものしか回していないんだが?」

「お前、今日は珍しく饒舌(じょうぜつ)……」

「ざっと見て急ぎ確認してほしいといった俺の言葉が聞こえなかったようなら、その詰まった耳を風通し良くしてやろうか?」


ゴリュゴリュゴリュゴリュ……。ディノスは無言で銃口を力いっぱい左右に捻る。


「痛い痛い!いででででで!しかもそこ頭!禿げる!やめろっ!」


リックは逃げようとして体を屈めるが、上からの力がかかって余計痛い。


「この際、頭に一撃あった方がまともになるかもしれんな」

「怖ぇこと言ってんじゃねーよ!つーかおま、安全装置外れてんじゃねーか!」

「レティアーナには当てないから大丈夫だ」

「当たり前だ!って待て!俺なら良いのか!」

「構わん」

「やめろ!目がマジだから!」

「安心しろ。この状況で冗談は言わん。イフィルス、レティアーナを離しておけ」

「あっ、はい……」


フィルはレティの手首を取ったが、リックが両手でレティをがっしり抱いているため移動できない。

レティと言えば、声を荒らげずにディノスが怒っていて、リックがそれについてワーワー騒いでいるくらいしか分からない。


「あの、フィルさん」

「知らない方がいいと思いますよ?」


言いたいことを分かっているフィルは、困ったように笑った。リックの頭に銃口を突き付けてディノスが怒っていると分かれば、レティは間違いなくアタフタと慌てるだろう。



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