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つかの間の日常?

「街……!」


水平線くらい遠くに見える景色。箒を片手に持ったまま船縁に手をついて、レティは目を輝かせた。

もう一か月近く、陸には寄っていない。最速で、レティの故郷かもしれない土地を目指してくれているからだ。

それでも補給のためにと寄ることになった街が嬉しいと思うのは、罰当たりだろうか?


「嬉しそうですね」

「フィルさん」


聞きなれた声に振り返ると、レティと同じ背丈くらいの童顔なクルーがニコニコしながら少し後ろに立っていた。青みのやや強い黒髪がサラサラと風に揺れている。隣の部屋の住人。

本当の名前は『イフィルス』なのだが、相部屋で何かと一緒にいる赤毛で体格のいいグレスがフィルと呼ぶので、うっかり移ってしまったというわけだ。


「久々にちょっと長めの停泊ですもんねー」

「ですね」


隣に来たフィルの言葉に頷く。二人で気を緩め、はぁーっと息を吐いた。そしてハッと我に返る。


「私、お掃除の途中でした!」

「終わっていないなら手伝いましょうか?」

「ありがとうございます。でも、もう片付けるだけだったんです」

「なら、後はやっときますよ」


レティの足元にある僅かなごみをまとめた袋を手に取り、ついでに箒もひょいと貰い受けた。


「ああっ!でも」

「レティアーナさん。もっと俺らを頼って任せてください。ま、こんな大したことないものじゃ格好つかないけど」

「あ……、はい。ありがとうございます」


肩を竦めて言うフィルに、レティは笑顔を返した。


「うん。笑った方が倍可愛い。あのリック船長が骨抜かれちゃうわけだ」

「え?」

「まんまの意味ですよ」

「ええ?」


リックの時もそうなのだが、今までの経験上あまり褒められ慣れておらず、面と向かってはっきり言われると、恥ずかしさが先に出てしまう。

そんなわけで、かぁーっと顔に熱が上ったのを感じ、無意識に頬に手を当てる。

その様子を見て、フィルは眉を下げて笑った。


「こんなこと言われても返答困りますよね。すみません。ただ、レティアーナさんは本当凄いと思ってます」


彼が歩き出したので、レティも合わせて歩く。


「船長は気さくな人なんで普段忘れていると思うんですが、保安部が管理している危険人物ブラックリストに、最重要マークつけられてますからね。普通に法の範囲内で暮らしてる人から見たら、海賊ですし、ただの怖い化け物みたいなものですよ」

「リック様が化け物……」


恐ろしい彼に姿を想像しようとしたのだが、格好良さが上に来てしまって上手く行かなかった。ただのコスプレした人程度のものしか出てこない。


(何想像してるんだろう……)


レティが何やら想像を膨らませているのが分かったが、フィルは特に突っ込まなかった。


「あくまで例えです。ただそういう人をレティアーナさんは落としちゃったんで、やっぱり只者じゃないなって俺は思いますね」

「そうなんですかぁ」

「そうなんですよー。知っての通り、船長は悪意や敵意がなければ、意味もないのに手を出したりしません。実力上危険視されているだけに近いので、保安部も変に探し回ったりしないんでしょうね。タチが悪い海賊は他に沢山いますから」

「だとしても、化け物はちょっとないわぁ」

「!」


声が降ってきて足を止め、二人とも上を見る。



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