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無意識の声11

体の疲労には抗えず、レティの意識は深い深い眠りの国へ落ちていく。その時間には一体何があるのか。

真っ暗な闇の空間が段々開けてくる。裸足の足に土の感触がした。

そこにあったのは、まっさらな土地。草も木もない。 ただ碗のように、その場所の真ん中が抉れて沈み込んでいる。木は離れたところにあるようだが、レティの場所から少し遠い。

レティが一人佇んでいるだけで、他に生き物の気配がない。ただその場所は空からの太陽に照らされ、部分的に金色に煌めく所があるようだ。

左右をキョロキョロ見回し、そして風に乗って微かな音が聞こえた。


(これは、泣き声……?)


先程まで一人きりだったはずなのに、土地の一番沈んだ所に小さな背中が見えた。しゃがみ込んで誰かが泣いている。それもかなり幼い声。

地面を蹴るようにして、ふわふわした足取りでそこへ向かう。


「あの、大丈……っ!!」


ゴッ!!小さな背中に触れる前に、強風が襲う。思わず腕で顔を庇い、目を閉じた。直ぐに風が止み、腕を下ろして目を開けた時、外の景色は綺麗に消え去っていた。

代わりにテーブルと椅子があり、誰かが座っている。その人は両手で覆って泣いているらしかった。


『酷い……。酷すぎるわ。こんなこと』


その声に聞き覚えがあるような気がしたが、誰なのかはっきり思い出せない。後ろ姿しか見えないが、それにも覚えがない。

声が出せず、レティはその光景をずっと見ていた。







一方リックは読みかけの本に集中出来ず、閉じたそれをベッドの脇に置いてレティの頭を撫でていた。


(寝てる間もこれで安心できればいいんだが……)


静かな部屋には寝息しか聞こえない。フィルは持ち場の仕事に戻り、静かにすることを条件にリックの部屋に残ったユリウスも、暇を持て余してソファで寛いでいるうちに寝てしまっていた。

そうしてかなりの時間が経ったと思う。レティの表情に変化が出る。苦しげな表情になり、寝ているのに眉間が寄っていた。


「……!」


リックは驚いて手を止め、そして思い出す。


(そういえば、前にここでレティを寝かせた時も確か)


レティは魘されていた。そして今も。あの時は呻きにしか聞こえなかった声。


「……しが」


小さな唇が動き、何かを言っている。耳を近づけて聞き取る。


「……わた、しが……なきゃ」

「もう一度言ってくれ」


戸惑ったが、リックは声をかけてみた。すると、再度レティが答えた。


「私が、守ら……なきゃ」


(守る!?)


「守るって、一体誰を」

「だい……じな、……私の……子」


素早く考えを巡らせる。レティの年齢から考えて、子どもがいるとは考えにくい。守りたい相手は親か、あるいは友人か。しかし親に対して『子』という表現は使わないだろう


(長く住んでいた島でも、心を許せる友人が居たとは思えないが……)


レティを疎ましく思って居た島の住人で、彼女に良くしていたのは育ての親のジョアンと、責任感の強い町長くらいだったはずだ。


「守るってまさか……レティか?」

「私の……レティ……アーナ」

「!」


(これは、レティの母親の言葉!?)


クスンと鼻を鳴らし、レティの目から涙が落ちる。リックはハッとなり、レティを起こした。彼女を悩ませる原因を探すのに夢中になり、現実へ引き戻すのを忘れて居たからだ。



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