無意識の声7
更に。
(えーと……)
リックからの許しが出たと仲間から聞き、再び外に出てきたレティは、人集りを少し離れたところで見ていた。
「お前らぁ!ノッてるかぁー!?」
「うぉ――!」
ルーファスがギターを鳴らし、その周りを取り囲む船員たち。両手を上に挙げたり頭を振ったりして、彼の歌う音楽に合わせてリズムを取っている。
(これは何がどうなって、どこから突っ込んだらいいのかしら……)
昨日襲撃してきた相手と、音楽を通じてもう打ち解けているとは。
今日の夕食はシェフが気を利かせて外にテーブルと料理を運んでおり、好き勝手に取って食べたり音楽を楽しんだりしている。
骨つきチキンを口にくわえ、手に持っている分を雪狼に与えながらユリウスが来た。
「まあ、あいつやっぱ歌だけは上手いんだよな」
「なかなか激しいリズムの曲ですね」
「別にあいつの歌も嫌いじゃないけど、俺はレティの歌の方がいいかな」
「そうですか?ありがとうございます。嬉しいです」
「そりゃ、レティのとあいつの歌はジャンルが違うからなぁ」
「リック様」
いつの間にかリックがジョッキを片手に側に来ていた。側の壁に寄りかかり、雪狼がしゃがんだのでその上にユリウスが座った。
「ユリウス。俺たちは少し遠く離れた所に行こうと思ってる」
「遠くって?」
「レティをこの船に乗せる時に約束したんだ。両親がかつて住んでた地に行くと。レティは幼かったし、しっかりその場所を覚えてないんだが」
リックの手がレティの頭に乗る。 騒がしい中ではあったが、こちらの出している声が落ち着いているので、会話は普通にできた。
「色々当たってみて、レティの昔住んでいた所なんじゃないかって目星のついた島があってな。そこに行ってみる」
「探して下さって居たんですか?」
頭に乗った手に、思わず自分の両手を乗せてしまう。レティは嬉しくて笑顔になった。
「約束を違えたりはしないさ」
「ありがとうございます……」
「お前がうちを気にかけてたまに来てくれてたのは知ってるけど、暫く会えなくなるだろうから一応言っとこうと思ってな」
「そっかー。レティとの約束か」
リックの話を聞きながら、胡座をかいた上に手を乗せてユリウスは頷いた。
「リック兄は強いから必要ないかもだけど、もし万が一俺の力が必要になったらすぐ言ってくれよな」
「ああ。サンキューな」
和やかに言葉を交わす幼馴染のリックとユリウスを、レティは微笑ましい気持ちで見守っていた。




