船に隠された不思議な秘密3
「借りてこよう。本棚と、壁のそのドアの向こうが書庫になっているから、興味があるなら本を読んでたらいい」
「はい。あっ、ありがとうございます」
レティは鞄を探すときに取り出した両親の写真を眺めた。
そう言えば今までは直接会っていたし、写真を撮ることもなかったからジョアンがいなかった。
(おじ様のお写真も頂いて持ってくれば良かったなぁ)
そんな時だった。壁の向こうでゴトリと何かが落ちる音がした。
そこは書庫だと聞いたが、こんな時間に誰だろう?
それにリックの部屋は奥まったところにあるし、書庫はここと別にもう一つあるはずだ。
少し怖いが、船の上だから泥棒などの忍び込みではないなは明らか。
興味心の方が上回り、両親の写真立てを胸に抱いてドアに近づいた。耳をドアにつけたら足音がする。
ドクンドクンとレティの心臓が大きく鳴る。
わざわざここまでくる誰かを見たくて、震える手でドアノブを下げた。
音を立てないように薄く開けて、目を覗かせる。
そこは電気がついて明るかった。
(どなたかいらっしゃるんだ)
今度こそレティはドアを全開にした。そこにあったのは、床に落ちる本。
「?」
何気なくそれを拾おうとした途端。
ササササ……。レティは反射的に手を引っ込めた。
(今、本が動いた?)
よく見たら、本は床に着いていない。
(えっ?ええっ?)
もう一度本に手を伸ばしてみるが、やはり本が触れられないように動く。
こうなったら、本の下を見てみないと気が済まない。もう夢中だった。
「待って!えい!あ、あっ、もうっ」
本の方がすばしっこい。もう一度本に勢いよく手を伸ばしたら、急に本が床に落ちた。そして。
バン!背後にあったリックの部屋へ続くドアが勝手に閉まった。
「え?」
レティの姿が見えていて、リックが閉めるはずがないし、第一書庫に入っていいと言ったのは彼だ。
ということは、今ドアを閉めたのは誰なのか?
背後に目を向けたレティに更に驚くことが起きた。




