無意識の声6
「興味はないな」
「!?」
ルーファスは、リックの言葉に信じられないという顔をした。
「レティが例えば楽園の女神だからとか、特別な力を持っているからここに置いているわけじゃない。今はこの船の家族の一員として、知っておかないといけないことはあると思うが……」
そう話している時、風が両者の間を吹いた。先ほどまでのうららかな陽気とは逆で、冷やりとしたものだった。
ユーシュテは無意識に両腕を寄せる。 それと同時に、いきなり船に強く雪が吹き荒れた。
「ぎゃっ!何よ、寒いっ!」
「んなっ!?」
ルーファスとユーシュテの声が重なった時だった。 シビレエイとその上のロックな男が氷漬けになり、そして。
「リック兄!大丈夫か!?」
聞き慣れた声と、遠吠え。甲板に真っ白な狼が着地した。その上に乗っているのは、太陽色の髪で目立ちすぎる容姿の――。
「ユリウス」
リックは新たに乗り込んできた主の名を口にした。
「何かここにデカイ生き物が見えたから、何かあったのかと思って――って!ルーファスぅうう!?」
氷の塊の内部から、電気が走る。パリパリと軽い音がしたと思ったら、強い電撃で氷が粉々に弾け飛んだ。
「なっっにしやがんだ、コラァ!あ?ユリウス!?いや、とにかく何してくれてんだお前ぇ!」
「悪りぃ!てっきりこの船を狙った奴かと思って」
何やら顔見知りらしいユリウスとルーファス。
「襲撃されたのは確かよ。昨日だけど」
「何っ!」
ユーシュテの言葉に反応し、ユリウスはルーファスの黒いロック風ジャケットの襟を掴んだ。
「お前ぇ!誰の船に手を出してるんだよっ!お前ごときの実力でリック兄に勝とうなんざ、千光年早いんだよ!」
「関係あるかよ。俺がどこと戦おうがユリウスには関係ないだろっ!だいたい光年は時間じゃなくて長さだろ!このバーカ!!」
「んだと!やるかぁ!」
「やってみろ!」
歯をむき出し、睨み合う二人の間に激しい火花が散る。
「せ、船長……」
様子を見に降りてきた見張り当番が、リックに声をかける。再び現れたルーファスとは戦闘にならず、しかし後から来たユリウスとは、何やら揉めているということは上から見えた。それなのに、リックは見ているだけで止める様子もない。
「あの二人にここで暴れられたら困りますよ」
「まあ、そりゃそうだな。今の所はガキのケンカみたいなものだが……」
リックは歩き出し、今や額をつけて押し合っている二人の襟首をそれぞれ掴んだ。
「お前らケンカするのは勝手だが、やるなら船の外に出てやれ」
「ほんっと男ってガキなんだからっ」
呆れた顔で溜息をついたユーシュテに、リックが振り返っていう。
「油を注いだのはお前だろ、ユーシュテ。まったく……」
「ふんっ」
彼女はそっぽを向き、舌を出した。




