表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
425/451

無意識の声2

ユーシュテがディノスから手を放し、船長室のドアを開ける。リックは中に入り、レティをそっとベッドへ降ろし、体を支えて靴を脱がせた。それから横たわらせ、布団をかける。


「座ってくれ」


リックは真紅のジャケットを脱いで机の側の椅子に掛け、それからテーブルを挟んで向かいあったソファへ移動する。

ユーシュテとディノスは書庫側、リックはベッド側へ座った。そして、アルから聞いた話を二人へ話した。


「成る程。楽園の女神に関する情報にパスが……」


静かに聞いていたディノスが顎に手を当て、頷いた。


「ああ。レティの力やその他に関しては本人も含め、不明な部分が多い」

「その他って、事故みたいに育った島に流れ着いたこと?」

「それもあるし、出生のことも」

「「え?」」


ユーシュテとディノスの声が重なった。リックは少しベッドの方を振り返る。レティがまだ寝ていることを確認し、声を更に潜めて話し始めた。


「話してなかったか?レティの両親は何らかの理由で、自分達の生まれ故郷の友達――つまり酒場のマスターへ預けようとした」

「それはリチャード。貴方からも本人からも聞いたわよ。そのマスターと行き違いになってる間に、変態の虐待男がトラウマ作ったんでしょ?」

「そうだ。レティはその両親が本当の親だと思っているが……。マスターの話だと、その両親のどちらとも血の繋がった子ではないらしい」

「!」


話を聞いた二人の目が大きく開く。そしてお互いに顔を見て、どちらも初耳だというのがわかった。


「リック、流石にその話は聞いてないぞ」

「すまん。悪い。話したつもりでいた」


リックは顔の前に片手を立て、詫びた。


「え、何?じゃあレティを産んだ親は誰なのかわかんないって事なの?」

「そういうことになる」

「どこで誰から産まれてきたのか、何故あんな力を持っているのか、何のために力があるのか。レティ、わかんないことだらけじゃないの」

「そうだ。それで、レティがかつて住んでいた場所を探していたんだ。レティをこの船に乗せたきっかけで、望みでもあるから。その可能性があるのが『スカイ・アリエス』だそうだ」


「何か名前だけは聞いたことがあるような」


人差し指で唇をツンツンとつつきながら、ユーシュテが言う。ディノスが説明をした。


「昔の痕跡がよく見つかったりして学者の好む場所で、本来ならそう目立つ土地ではないんだが、その島の名が広がるのは別の呼ばれ方があるからだ」

「別って?」

「『始まりの島』」


リックが先に答えを言い、ユーシュテが聞き覚えのある言葉に驚く。しかしその先がまだあった。ディノスが続ける。


「それだけじゃない。その島には古くからある、とてつもない大木があって、それがシンボルでもある。故に、『天空の島』だとか『神に一番近い島』とも言われているそうだ。そう言うわけで、その島をモデルにした神話や物語もある」

「リチャードは、そこにレティが住んでたと思うの?」

「それはまだ確証がない。ただ科学者カナラスの言葉もあるし、今の所レティに結びつきそうな場所はそれしかない」

「行くのね。そこへ」

「ああ。何かが見つかればいいが、見つからなくても構わない。それが冒険てものだろ?」


リックは心底楽しそうに笑った。

行くこと、見ることに意味や楽しさがある。愛するレティや、仲間達と新たな発見をして行く。それが人と外れた生活を選んでいる理由でもあるのだから。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ