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【ラグナロク小話】王様ゲーム6

「はい、引き直しですー。さっきの逆で行きます」


ディノスから順にクジが回された。


「一度、王様になってみたいのです」

「じゃあ、俺が引いたら代わってやるからな」

「いいんですか?」

「引けたらだぞ」


リックは笑いながら、レティの頬を指で擽った。


「僕も代わってあげますよ。レティアーナから何か命令されてみたいですから。どんな可愛いことを言ってくれるんでしょう。楽しみです」


頬杖をついてセリオがニコッと笑い、レティがその可愛さにキュンとなった。横にいたリックが気づき、じとっとした視線を送るが、セリオは舌をペロッと出しただけで平然としていた。


「俺はこれだあぁあ!」

「だから煩いっての!」


ユリウスは勢い良く引っ手繰るように引き、ユーシュテがツッコミを入れた。


「んと、……じゃあ私はこれにしますっ」


レティが指を左右に動かした後に中心を引き、リックも適当に引いた。中身を開いたら王冠マークは無く、しゅんとしょげかえってしまった。

一周してユーシュテに最後の一枚が渡され、司会が声をかける。


「はい!では王様はどなたでしょうか?」

「……またハズレですぅ」

「俺もだ。すまんな」


しゅんとしょげかえってしまったレティの頭を、リックが優しくポンポンと叩く。

セリオも何も言わないところを見たら、ハズレらしい。

そんな中、震えている体が一つ。


「これは……今度こそ……!」


ユリウスが目を輝かせながら、紙を上に向ける。


「この王冠マークは!俺が王様だ――!」


両手を拳にして上に向けて立ち上がり、歓喜を全身で表現した。


「よぉおっしゃあぁあ――っ!」


興奮してユリウスは立ち上がり、椅子に片足を乗せて人差し指を突き出した。


「ユリウス、椅子に土足で乗るんじゃない」


ディノスが静かに注意をしたが、今のユリウスには少年スイッチが入っており、耳に入らないらしい。


「俺にかしずくのはこいつだ!六番の奴!誰だ!」


意気揚々と言ったはいいものの、返事がない。


「こら六番!立ちやがれっ!王の声が聞こえないか!?」

「あ、は、はいっ!」


可愛らしい声と共に、慌てて立ち上がる椅子のガタガタとした音がユリウスに答えた。


「いっ……!?」


指名した王本人が怯む。


「何っ!ボケ女ぁあ――!?」

「はい。私、六番です……」


レティは紙をユリウスに見せるように差し出した。九と間違えないように、数字の下にアンダーラインがある。


(よ、寄りによって一番言いにくい奴に……っ!)


「王様早くしてくださーい」


頬杖をつき、ユーシュテが言った。


「う、うるせぇっ!今考えてるところだ」


(下手なことを言うと、後からのリック兄の攻撃がヤバイ)


チラリとそちらを窺い見れば、リックは椅子の背に寄りかかって腕を組み、ニヤニヤとしている。

ユリウスの焦りなどお見通しなのだ。

レティは立ったまま、静かに待っている。その表情は、不安と好奇の両方が入り混じっていた。


「お前、は……その、ねっ……!」

「ね?」


首を傾げ、アプリコットブラウンの髪が細い肩にふわりと覆いかぶさった。


「こっ、猫になれっ!!!」


(そ、そんな……。急に言われても)


レティの顔が赤くなったが、ユリウスも同じだった。


(何言ってんだ、俺はぁあっ!!)


おろおろしているレティが可愛く、リックは悪戯心でわざと黙っている。

レティはぎゅっと目を閉じて、覚悟を決めた。


(ダメダメ。ルールだから守らなくちゃ)


軽く握った両手を顔の横に持って行った。そして。


「にゃ、にゃあー……」


シーンと静まった食堂には、小さな鳴き声がよく聞こえた。

真っ赤になり、子猫のような仕草で普段よりも可憐さが増し、全員が固まった。


(可愛すぎるっ!!!反則っ!)


藍色の目が開き、全員の視線が自分に向いているのを悟ったレティの顔が湯気を出す。


「見ないで下さいぃーっ!」


両手で顔を覆ってしまう。


「王様ー?」


見兼ねたユーシュテがユリウスを見、彼が慌てて言う。


「もういいっ!座れっ」

「恥ずかしくて明日から生きていけませんー」


テーブルに突っ伏し、レティが泣き言を言った。


「よくやった、レティ」


リックが放心から我に返り、レティの背中を摩った。


「はーい。じゃあ解散ねー」


司会までぼさっとしているので、勝手にユーシュテが立ち上がって終わらせた。ディノスも合わせて立ち上がる。


「リック、しっかりしろ」


完全にレティの可愛さにやられたリックを見て、ディノスが言って出て行った。

こうしてにぎやかな夜は更けていく。




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