【ラグナロク小話】王様ゲーム5
「ユース。お前はまったく……」
ノリノリなユーシュテの発言に、ディノスはため息をついた。
「あー!ユースちゃん!」
「一番最初に引くとはなかなか運が強いな、ユーシュテ」
「よ、よりによってエロ女かよ!最悪だぁ――」
「お黙り。オレンジの愚民」
エロ女発言を聞き付けたユーシュテが、ユリウスを睨む。
「女王に挑戦しようなんて千年早いわよ。何番にしようかなぁ……」
頬に人差し指を当て、ポンポン叩きながら言った。
「じゃあ七番!誰?」
ユーシュテの問いに、静かな声が答えた。
「俺だ」
テーブルの上に、ディノスのひっくり返された紙が置かれる。太い文字で確かに『7』と記されている。
「お前か」
リックが頬杖をついて面白そうな顔をする。
「そしたらディノスぅー、部屋に帰ったらマッサージしてぇー」
両手でディノスの肩に手を置き、甘えるように言う。
「いつも通りだな。それで良いのか?」
「足と肩と腰揉んでねー」
恋人がうんうんと頷くので、ディノスも一度頷いた。
「仰せのままに。女王様」
「何だ。意外と面白くないな」
「あたしを何だと思ってるのよ!」
リックの感想が聞こえ、ユーシュテがテーブルに手をついて睨む。
「もう少し足蹴にするのかと」
「忠誠誓ってるディノスに、そんなことできるわけないでしょっ!」
「他の奴ならやられてたのか。恐ろしいな。当たらなくて良かったな、レティ?」
リックはレティの肩に腕を回し、少し抱き寄せた。
「リック様。私が当たっても、そんなにユースちゃんに無茶なこと言われない気がしますよ。だって、普段から優しいし」
上目遣いにリックを見て、藍色の視線はユーシュテに移った。
「……うっ」
(確かにレティには言いにくい……)
真っ直ぐに信じ切った目で見られ、それを裏切ってはいけないような気にさせられてしまう。
「そうね。もしレティだったら……、カフェスイーツめぐりに一日中付き合って貰うとかになったかもね」
「そんなのだったら、王様ゲームでなくても付き合うよ?」
「ホント!?じゃあ、次の島でご当地絶品スイーツ制覇するわよ!もちろん、リチャード抜きで!」
これではレティに対してというよりは、リックへの罰ゲームだ。自分が抜きにされるならディノスが保護者としてついて回るのだろうし、レティが喜んでいるのでムッとした気持ちは我慢した。
「レティに無理やり食べさせて、お腹壊させるなよ」
「分かってますぅー」
「お前、責任持ってちゃんと見とけよ」
ユーシュテはリックに向かって、ベーッと舌を出して答えた。彼女に食が絡むと暴走するのは目に見えている。そこで釘を刺すようにディノスの方を見たら、腕を組んだまま静かな頷きが二度ほど返ってきた。
「じゃ、じゃあ命令が済んだので一旦回収します」
会話に区切りがついたのを見計らい、司会のクルーが手を上げて全員のくじを回収して回った。




