【ラグナロク小話】王様ゲーム3
リックの足元から発生した微風にレティとユーシュテの髪が揺れ、クルーが危機に気づいた。
「やめて、船長ー!」
「食堂が木っ端微塵になっちまう!」
「俺らも微塵切りになってしまうよぉ」
レティを抱き締めていたユーシュテが眉を寄せた。
「ちょっと大袈裟に表現しすぎたかしらね?」
「ええっ!?どうするの、ユースちゃん!?」
リックとセリオが床に魔法陣を出した瞬間、二人の背後にぬうっと目を吊り上げた影が立った。
「くぉらぁあっ!食堂を崩壊させる気か!」
「やかましい!」
セリオをジャンが、リックをいつの間にか来たディノスが拳骨した。
二人の集中が削がれ、魔法陣がぷつりと消える。
「――っててて」
「リック様、大丈夫ですか?」
ズキズキと痛む頭を押さえたリックに、レティが心配そうに声をかける。斜め向かいの席では、頭の後ろにたんこぶを作ったセリオが机に額をつけて大人しくなっていた。
たんこぶを見たユリウスが青ざめている。
「放っておけ、レティアーナ。自業自得だ。全くお前はレティアーナが絡むとすぐに冷静さを失う。敵が攻めてきたなら致し方ないとしても、今のはくだらん。もっと自分の立場を考えて行動しろ」
向かいの席に腕を組んだディノスが座り、説教をした後にため息をついた。
「にしても、容赦無さすぎだろ」
「当たり前だ。痛くなくては意味などなさん」
「まあまあ。――室内と言うことで、今回は平和的に行きましょー!」
無理に声を明るくしたクルーが手を上に掲げた。そこには細長い紙がたくさん握られている。
「何だそれは?」
「王様ゲームです。王様を勝ち取って命令したらいいんですよ」
クルーの提案に、リックは立ち上がった。
「懐かしいな。王の命令で圧力をかけ、悶え苦しむ様を見るゲームか」
「違います。もっと平和的です。」
「お前のその歪んだ解釈はどこから来るんだ」
呆れるディノスに棒を握ったクルーが問いかける。
「ディノス副船長はご存知ですよね?」
「王のクジを引いた人物の指示を聞くというゲームだろう?やったことはないが、知っている」
「したことないんすか?」
「興味が無かったのでな」
「うーん。副船長はそうかもしれないですね」
クルーは納得し、レティは喜んだ。
「私と同じでしたことがない人がいて良かったですっ」
「まあいいでしょう。それで決着をつけましょう。良いですね?リチャード・ローレンス」
「ああ、セリオ。異論はない」
「俺も王の座を勝ち取るぜ!」
ユリウスは腕まくりをしてワクワクとしながらリックの真向かいの席に座った。
「レティ」
「はい」
リックに手を引かれてレティは隣に腰掛けた。反対側の隣にはディノス、並んでユーシュテ。
向かいはレティの正面にセリオ。他はクルーが埋めた。
仕切りのクルーが説明を始める。
「結構遅い時間ですので、我らが美女二人の美容の為にも二ゲームで解散としようと思いますが、異論はありますか?」
全員が反論をしなかったので、了承とされた。
「では、一度目はじゃんけんで勝った人から時計回り。二度目は命令された人から時計回りにこの紙を引きます。王様は中に王冠マークがあります。参加人数が多いので他の人は番号となります。王様は番号で指名した人に命令を一つ下して下さい。王様以外は自分の番号をバラさないように。以上です。では全員手を出して」
じゃんけんを何度かした結果、ディノスとユーシュテが残った。ディノスが譲ったので、ユーシュテが一番に引くことに決まった。




