【ラグナロク小話】王様ゲーム
「ユースちゃん、星が綺麗だね」
「そうね。都会から離れて晴れた日の夜の海は最高だわ」
お風呂に入ったあとに、外に出てユーシュテと二人で涼みながら空を眺めていた。
火照った体にスッと通る夜風が気持ちいい。
「あたし、喉が乾いちゃった。食堂行かない?」
誘われて食堂のドアを開ければ。
「うわあああ!俺か――!」
「今度は俺様が当たりクジだぜ」
突然の大声に、レティは肩を跳ね上がらせた。一つのテーブルにいた四人のクルーが、わーわー騒いでいる。
「もぉー。びっくりするじゃない」
レティと顔を見合わせたあと、ユーシュテと連れ添って近くまで行く。
「一体何の騒ぎ?」
「ああ、ユーシュテさん。……と、レティアーナちゃん!」
「こんばんは」
レティが挨拶をすると、クルーの一人が小突かれた。
「呼ばなくても来てくれて良かったじゃねぇか?」
「いや、マジ無理だって!八つ裂きにされたあとに海に捨てられるよ、俺!」
あわあわと青ざめたクルーが、両腕をクロスにさせて頭を振った。
「大丈夫だって」
「そこだけは踏み込んじゃいけねぇラインだろー!」
「お前、王の言うことが聞けねぇってか?これは絶対ルールだぞ」
「くぁーっ」
頭を抱えて振ったあと、散々言われたクルーが立ち上がった。そしてレティの前に立つ。
「レティアーナちゃん、ごめん!」
「ひゃ……?」
腕を引っ張られてつんのめったところで、レティの頬にクルーの唇が近づく。
隣に立っていたユーシュテの目が鋭く光った。
ガンッッッ!痛々しい音が響く。
ユーシュテがクルーの頭を掴んでテーブルに叩きつけたせいで、哀れな彼が白目を剥いて頭から煙を出した。
「ああっ!」
レティは両手で口を覆って息を飲んだ。
「セクハラか!つーか、リチャードに殺されたいの?」
冷たい目で見下ろしたあと、ユーシュテは残りのクルーを燃える目で鋭く睨み付けた。
「で、何なわけ?」
事と次第によっては許さないと怒りのオーラを出し、クルーが慌て出す。
「悪いのはこいつです。こいつが命令しました」
「何?お前らも喜んでただろっ!」
罪の押し付け合い。ユーシュテは剣呑な視線を投げると踵を返した。
「ディノスとリチャードを呼ぶわ」
「ま、ままま、待ってください!これゲームですよ。王様ゲーム!だから冗談です!」
「王様ゲームですって?」
「王様ゲームって何?」
レティは首を傾げた。
(ちょっ……。王様ゲームを知らないとか!)
(ボウリングも知らなきゃ王様ゲームも同じだってか!?)
クルーが心の中で突っ込みを入れているとき、ユーシュテが腰に片手を当てて説明した。
「王様ゲームってのはね、クジで当たりを引いて王様となった人が、指名した人を奴隷のように傅かせて足蹴にしたついでに足も舐めさせて、その人が一番嫌がることを命令するの。そして羞恥と屈辱に悶える様を、高笑いで楽しむって言う鬼畜ゲームよ」
「当たってるようで違います。」
野蛮ゲームのようなユーシュテの説明を聞いたクルーが、白目で否定した。




