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リックの不在11

「ディノス様!」


体を起こしたレティも激しい雷撃音で、何が起こったかを見てしまう。


「レティ、待って!」


ユーシュテが止めるのが少し遅れ、レティがディノスに走り寄ろうした時、ディノスから離れた尾が、レティの手首から二の腕にグルグルと巻き付いた。


「あっ!」

「レティ!!」


グイッと強い力で引かれた。踏みとどまる暇もなく持ち上げられ、男の元に連れていかれてしまう。


「お前らいいか。全員動くなよ」


男の手がレティの首を覆う。


「お嬢ちゃんの苦しむ姿なんざ、見たくねぇだろ?俺もできれば、武器も持ってない女の首なんか、締めたくないからな」

「いた……」


腕に巻きつく尾と、かかる自分の体重で片腕が悲鳴をあげていた。


「ちょっと俺の質問に答えてくれれば、楽にしてやるよ。お嬢ちゃんも下手に隠し立てして、仲間を危険な目には合わせたくないだろ?」


レティが船を見たら、全員痺れに表情を歪めている。人質がいるだけに迂闊に動くこともできず、ただ状況を見るだけだった。


「お嬢ちゃんがさっき言いかけたことな」


『誤解です!わ――』


強引に遮られた。


「その先はこうだろ?『わたしは違います』」

「っ!」


レティの瞳が揺れ、その動揺が十分な答えとなったらしい。わざわざイエスを言わせることもなく、続く。


「これは遠目だから分かりにくいんだがなー」


男のジャケットから小さく折りたたまれた紙が出され、それが開かれる。それには見覚えがあった。


「これはお嬢ちゃんだな?」


アリオナでばら撒かれた、レティこそが楽園の女神だという号外。


「ち、違うんです。私は本当に……」

「この状況で嘘をつくのは懸命じゃないな。身の程知らずって言うんだぜ?」


チッ……。腕がチクっとしたと思ったら、エイから放たれた電撃が尾から流れた。バチバチバチッ!


「あっ!きゃああああああっ!!」

「!」


雷撃に取り巻かれ、レティの体が青白く光る。見守っていた一同が息を飲んだ。長くは続かず、それはすぐに収まった。

体は痺れ、火傷をしたのか体の所々が熱い。髪も少し焦げた匂いがする。


「ちぃとお仕置きだな。ま、今のは弱くしたが痛かっただろ?次に嘘をつくと、あれの強力な奴がお前さんと仲間に行くぜ?」


男の指がレティの顎に触れ、クイっと上を向かせる。


(嘘じゃないのに。けどこのままだと皆さんに電撃が。どうしたら……)


「やめろ。レティアーナは嘘を言ってはいない。己の望む答えを無理強いするな」

「ディノス様……」


少しよろめきながら立ち上がるディノスが、代わりに言った。


「お前の探しているものはここにはない」

「だから、じゃーま。お前には聞いてないっての」

「!」


男の指に少し電気が走ったのが分かり、レティは青ざめた。


「やめて下さい!お願いです!ここにいる皆さんに、酷いことをなさらないで下さい」


(前も……こんなことがあった)


酒場でレティを庇うジョアンに対し、無慈悲な海賊が割れた酒瓶で彼を殴ろうとした時。


(あの時は)


突然静かだった海を何かが走る。船めがけて荒ぶった風が流れ、そして甲高い鳥の鳴き声が聞こえた。

鋭い風の塊が飛んできて、レティ捕まえているエイの尾を切った。男が殺気に気が付き、背後を振り返った。


「!」


(これ……は……)





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