表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
404/451

リックの不在4

『さて、とっ』


カタカタカタ……タン!リズムの良いキータップ音が止まる。


『こんなもんで如何ですかね?王女殿下』


アルとチェルシアの目の前に、複数のフォルダが見える。


「ありがたいですわ。然しながら、こうも簡単にハッキングされてしまうとは、我が国のセキュリティも見直す必要がありそうな……」


呆れ顔でチェルシアはため息をつく。


『そうでもないですよ。なかなか硬いセキュリティだと思いますがね。トラップも含めて何重にも守りがかけられていましたから』

「うぐ……」


それをいとも簡単に外してしまうとは、やはりカナラスは危険だと思わざるを得ず、チェルシアは呻いた。彼はその優れた頭脳を、間違った方向に使ってしまったが……。


『ここの情報を複写コピーするのは止めておいた方が良さげですね。足がつく』

「貴方は既にここの情報をご覧になったことが?」

『私が見たのは別のものです。ここは王宮最重要人物の権限がなければ入れない。パスを盗むのは簡単ですが。楽園の女神なんて、自分の生きているうちに目の前に現れるなんて思ってませんでしたのでね』

「そりゃそうだよな」


アルが笑う。


『で、ご覧にならないので?早くしないと、セキュリティチェックが気づきますよ』

「いけない」


チェルシアはフォルダを開いた。新聞記事と思われるものが出てきた。


「原因不明の爆発事故の記事……?」


爆発事故の後と思われる現場の白黒写真、それに関する記事。


「爆発事故は頻繁に起きるものではないけど、珍しくもないよね」

「ええ」


顎に手を添えて首を傾げるアルの意見に、チェルシアは頷いた。肩から艶やかな黒髪が滑り落ち、胸元に掛かった。


「普通は、何重にもセキュリティかけるほどのものでもない気が。場所は……スカイ・アリエス島?」

「アレックス兄様!スカイ・アリエスと言えば、別名」

「「始まりの島」」


二人は顔を見合わせ、同時にその島の別の呼び名を口にする。


「観光地的な大きい都会ではなく、人が暮らす範囲は小さかったはず。ここは割と太古の生き物の骨や存在の痕跡などが見つかったりして、神話だと世界を作った神が初めに作った土地がここだとされていますわね。そういうわけで、確か開拓には制限がかかっていましたわ。学者など研究職員は、よく訪れたりする定番の地のようですけれど」


マウスをクリックして、新聞記事などの情報を開いていく。


「突如、森林地帯が爆発。跡を調べるも原因不明……」

「シア、こっちを見て」


アルは、隅に寄せてあった文書を指差す。


「これ」


チェルシアは新聞記事の上に、その文書を引っ張り抜く。


「兄様!これは」

「爆発の原因は不明。だが、跡地に謎の光る粒子」


アルが文書の一部を読み上げ、そして二人はレティの姿を思い浮かべた。謎の力を解放したレティ。透ける金の羽根、周りには光の粒が浮かんでいた。そしてそれは、彼女を狙ったカナラスの口から……。


『金色の乙女――レティアーナの持つ力、その謎の光。光の成分を簡単にですが解析した結果、始まりの地に残された謎の光の痕跡を記された情報と、同じものがあったんですよ』


受話器の向こうで、カナラスが落ち着き払った声であの時と同じようなことを言った。


『その力の強さはあの塔の設備では測りきれない程大きく、逆に機器が対応しきれずに損傷してしまいましたよ。まあ遥か離れた海上で放った力が、我々の元へ届くくらいですから』

「兄様。優しいあのお方は一体……」


どう反応していいかわからないと言った顔で、チェルシアがアルを見上げた。アルはすぐ側の窓から木々の間に映る空を見つめ、純真で固められたような存在を思い浮かべる。


(レティアーナ、君は一体何者なんだ……?)



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ