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リックの不在2

「ただのカモメじゃないか」

「しかし、国の刻印もありませんし……。危なげな何かを所持でもしていたら」

「あの小さな筒にそんな大層なものが入るとでも?心配しすぎだよ」


アルは苦笑した。


「万が一そんなことがあっても、俺はそんなことで狼狽えたりしないよ。とりあえず、君たちがそんな怖い顔してるから内容を確認できないじゃないか」

「しかしながら殿下」

「君たちとりあえず外してくれる?」

「は、はあ。殿下がそう仰るのでしたら畏まりました」


幾人かの滑稽な臣下たちは散った。


「もう大丈夫ですの。こちらへいらしてくださいな」


チェルシアが華奢な白い腕を空へ向ける。カモメはゆっくりと降りてきてチェルシアの手の先に近づき、やがて指に留まる。 アルは手を伸ばして筒を開け、丸まっていた封筒を取り出した。遠くで家臣が此方の様子を窺っていて、笑ってしまう。


「これは……」


チェルシアが封筒を覗き込む。


「あら、兄様。このお方は」

「まさかの。何の用だろう?」








場所は変わって、王国図書室。アルとチェルシアはそれぞれ分かれ、何やら本を探し回っていた。中をパラパラと見てから元の位置に戻し、アルは言う。


「手伝ってもらってすまないね、シア」

「いいえ。お兄様のお手伝いが出来て嬉しいですわ。それにしても……」

「情報がざっくりすぎて、探すのが手間取るなぁ。リックは全く。レティアーナの為じゃなきゃやれないよ。海辺の町や海上で、十三年から十五年くらい前に起きた事件とか」


腰に片手を当てて、アルはため息をついた。

ポストシーガルが運んできた手紙はリックのもので、レティのために調べ物をしてほしいということが書いてあった。

しかし彼が言うそういった事件は、小さなものから大きなものまで年中いくつあることか。


「コンピュータで調べた方が早いかもしれませんわ。新聞記事も恐らく保管してあるでしょうし」

「うーん。でも、なかなか厄介な事件とかだった場合、パスがかかってて書類出さないと見られなかったりするんだよね」

「とりあえず、試しに検索かけてみましょうか」

「そうだね」


図書室に設置してあるパソコンの一つにチェルシアが座り、アルはその後ろに立って彼女が操作する画面を見ていた。

パソコンの目疲れを防ぐために共用のメガネが置いてあり、それをかけてより理知的に見えるようになったチェルシアがキーボードを叩く。


「やはり、闇雲に検索かけてもだめですわね」


年代、海上や海辺の事件といえども引っかかったものが万を超えるかなりの数だ。 一度トップ画面に戻り、チェルシアは検索ワードを変えた。


「シア、何してるんだい?」

「アリオナの資料保管区域にアクセスしてますの」


パスワードとIDを求められ、自分のものを入れ込んでいく。


「大丈夫なのかい?」

「ええ。お兄様の国のデータにアクセスするには私に権限はありませんが、アリオナには多少ありますわ。もちろん、外部に知られてはならないこととなりますとやはりパスワード申請が必要になりますけれど」


カタカタと一定のスピードで打たれていたキーボードの音が、暫くして止まる。


「シア?」

「おかしいですの」


チェルシアは背後に立つアルを見上げる。


「あまりに多いので、途中で検索ワードを増やしたのですけれど……。海、海辺の町、事故、事件、そして……楽園の女神」

「!」

「あのお方がそうであるという噂の新聞は、私も見ましたわ。それで一応」


チェルシアは画面を指した。


「何故か、パスが掛かった情報があるようですの」


二人はお互いを見つめあい、そして画面に視線を戻した。


「見られるのかい?」

「やってみます」


米印で記されるワード。恐らくチェルシアの持つIDなのだろう。それを入れ込み、更にその先でパスが求められる。



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