覚醒の片影4
不死鳥はオレンジ色に輝き、そして反撃として先ほどの鎌に炎を纏わせたものを切り返してきた。
雪狼も鳳凰も交わして避けるが、足元に広がった灼熱を避けたところに、続けざまで炎の鎌が飛んできた。
「うあっ!!」
雪狼に当たってユリウスが弾き飛ばされ、船体に体を強打した。
「ユリウス!」
援護してやりたいが、ディノスやユーシュテも当然危機に晒されている。二人に鎌が向かい、リックは二人の元に駆けつけて風の壁で受け止める。
「リチャード!」
「二人とも、大丈夫か!?」
アダムは冷静に指先を下から上にあげ、リックが受け止めた鎌は形を崩し、炎となって広がり襲いかかってきた。
「きゃああっ!」
ユーシュテの悲鳴が聞こえ、三人のいた所が燃え上がって爆発した。ドカンと大きな音と振動がする。煙で視界が悪く、どうなってるのかわからない。
「っ!リック様!ユースちゃん!ディノス様っ!」
煙が収まった頃、とんでもないものを見た。
床にユーシュテとリックが伏せており、さらにその上にディノスがいた。二人をなんとか守るようにしていた彼の背中は服が焦げ、火傷しているようだった。
「ディノス!」
「ディノス、しっかりして!」
リックもユーシュテも即座に体を起こし、ディノスに呼びかける。
「……死んじゃいない」
「お前らしくない、何て無茶を」
「リック。あの二人に立ち向かうには、お前の力が必要だ。お前が大きな負傷するわけには……いかないだろう。……っ」
痛むのか、ディノスの顔が険しくなった。ユーシュテはディノスの頭を自分の膝に乗せ、泣きそうな顔をしている。
(酷い戦い……。どうすれば終わるの?どうしたらいいの?)
レティは両手を頭に当てた。混乱してくる。頭痛すら覚えるほどに。
(いつも私が戦いを招いてしまう。昔も、今も。いつも皆が私を追いかけてきて争いになって、傷つく。私のせい)
「……はぁ、はぁ」
息が苦しくなってくる。球体の中でレティは膝をついた。
(――私さえ居なければ良いの!?)
体が金色に波打ち、染まり始めた。いつもレティや周りを守ってきたその力。所が今回は様子が違った。
金のオーラが変に揺れている。リックがいち早く気がつき、そしてシュカもリックの様子で気づいた。
「レティ!!」
「ダーリン!レティちゃんの様子が!」
金の光が、グニャグニャと変な形で吹き出す。
「いや、いや……いやあああああっ!」
ドン!パリィイン!金の柱が現れ、アダムがレティを閉じ込めていた炎の球体は砕け散った。
「レティ……アーナ」
アダムもシュカも驚いて、行動を止めてレティを食い入るように見つめている。
「レティ!」
鳳凰の風を纏わせ、リックが宙に跳ぶ。
「あああああっ」
ヒュン!金色の光が稲妻のようになって、リックに向けて放たれる。今までただの一度たりとも、リックや他の者に攻撃を向けたことがなかった彼女。
「っ!」
すぐに避けたが、追尾のようになっていたそれはリックの体を取り巻いた。予想外で不意を突かれ、思わず風の力を切ってしまう。
「リチャード!」
落ちると思ったユーシュテが叫ぶ。身体能力の高さが幸いし、無事に着地できた。
これまでは淡いものだったが、今回は強く光を増していく金。
「どう……なってるんだ」
ユリウスもぶつかって損傷した船体から体を起こしながら、困惑した表情を隠せない。レティを中心として、光は強くなる一方だ。




