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不死鳥の宝石

「……」


レティはうっすら目を開けた。ふかふかでふわふわと心地いいものの上に寝ていて、周りの景色は見たことがないとわかった。

以前も同じような経験をした。リックの船に乗って間もない頃、黒船に無理矢理連れ込まれた時だ。

ただ、その時と違うのは。

ぼーっとしているレティの頭を、誰かが指先で撫でた。


「リック様?」


違うとわかっているのに、反射的にいつもレティを撫でてくれるリックを呼んで起き上がった。


「!」


目の前にあった手が驚いて、動きを止める。

レティはその人の顔を見た。

帽子ではなく、頭に布を巻いている。横に緑色の宝石をつけ、そこから布が少し垂れている。金色の背中まである長い髪。

黄金色とルビー色の互い違いの珍しい瞳。その輝きは慈しみを込め、優しくこちらを見ている。

上下白い服。袖や裾はすこし膨らみがあり、裾の長いベストも羽織っている。

少し口を開けたレティを見て微笑み、手を伸ばす。思わず反射的にビクッと目を閉じて肩を竦めてしまったが、温かい手が頬に触れただけだった。


「驚かせてしまったね」

「……」


瞬きをして黙って見つめていたら、彼が口を開いた。


「僕はアダム・カタール・シンドバッド。ようこそ。楽園の女神」


その言葉を聞き、レティは頭を振った。


「勘違いを呼んでしまっているんですけど、私、そんなんじゃないんです。楽園に導く力もないですし」

「最早、その噂は止められない。それに、君が気がついてないだけかもしれないよ?カシュカから聞いた。不思議な力はあるみたいじゃないか。ただ、無理矢理力を引き出そうとは思ってないから安心して。そうだ、君の名前を教えてくれるかい?」

「レティアーナです……」

「そうか、わかったよ。可愛い僕のレティアーナ」


アダムは一度レティから離れ、ベッドのそばに置いてある小さな棚の上のベルを取った。チリンチリン。軽く揺らして音を立てた。

すぐに入口から女の人が入ってくる。ドアがなく、布が垂れ下がっているそこから出てきたのは、首が大きくあいて胸までを覆う布、腰から下にロングスカートを履き、レースの布をショールのように腕にかけた人だった。褐色の肌に露出の多い格好がよく似合っている。

底のペタッとしたサンダルで歩いて来て床に膝をつき、持っていたものを(うやうや)しく両手で持ち上げる。

畳まれたそれをアダムが受け取り、ベッドに置いた。呼ばれた女は立ち上がって去って行った。


「君の服だよ。今着ているのは洗っておくよ」


そう言ってアダムは天蓋のカーテンを下ろし、ベッドにいるのはレティだけにした。

ピンクがかった薄い黄色の生地。全体に細かい模様。肩と腕の間が少しあいている。上を持ち上げ、まさか臍出しかと思ったらレティのはそうでもなかった。

スカートは同じ色のやはりロング。さらさらとした手触りで、何重かになっていた。あとは頭につける布、ピンクの強い金の輪。輪には飾りが幾つも垂れ下がっている。


「レヘンガという女性の服だよ。着替えが済んだら声をかけておくれ」


外からアダムの声がした。



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