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やきもち5

「誘ってんのか?」

「星空を見ながら、一度だけ。ダメですか?」


じっと見上げてくる彼女が、甘い甘い感触を心の隅まで広げる。


「滅相もございません。姫」


華奢な体を少し抱えて少しだけ座らせ、柔らかな唇を優しく喰むように口付ける。目を閉じたり、少しだけ開けたりと繰り返しながら、リックの腕の中でレティが蕩ける様な表情を見せた。


「ん……」


手持ち無沙汰な両手が自分の胸元を握っているので、その片手を拾い、指を絡めた。


「レティ?」


唇を離し、そして額同士がくっつく。


「どうだ?」

「リック様しか見えませんでした。ほんのちょっぴり、見えたような気もします」


ふふっと笑ってレティが答えた。


「……だろうな」

「リック様」

「何だ?」

「も、もっと……して、下さい」


今宵は薄い灯りのせいで、多分頬を色付かせているであろうレティがよく見えないのが残念だ。けど、だから彼女が少し積極的なのだろうか?


「ヤバイ……。何でそんなレティは可愛いんだ」

「きゃっ!」


力任せに抱きしめたせいで、レティが驚いて声を上げた。けどすぐに力は緩め、代わりに片手は彼女の頭を支える。


「レティ、愛してる」

「私も同じ気持ちです。リック様」


一度見つめ合い、そして目を閉じながら唇を重ね合う。

風の音とお互いの吐息、時折漏れるレティの声だけがよく聞こえた。

優しく軽い触れ合いを飽きるくらい与え、少しだけレティから離れる。


「レティ」


呼んだら、藍色の瞳が開いた。何度も何度も頬や頭を撫で、そしてまた二人が重なった。

名前を呼んだのが合図であるかのように、今度は柔らかく熱を持った舌がレティの口に入り込んできた。


(リック、様……)


昼間、書庫でされたものとは違う。小動物に接するかのように、優しく優しく突つかれる。そして誘い出して軽く吸われると、甘く痺れる震えが背中や腰を通った。

名残惜しくリックが離れる頃、二人の間を銀の糸が僅かに繋いで途切れた。

とろんとした蕩ける瞳でリックを見るレティは、純粋さや可憐さはそのままに、だけど普段には見られない色香を放っていて心を否応無しに惹きつけられた。

だがここは空でそこそこ風も吹いており、こんなところで彼女の服を剥いで、事を進めるわけには行かない。きっと風邪を引いてしまうから。


「大丈夫か?」


尋ねると、コクリとレティが頷く。そこでリックは腕を掴んで引っ張り、その後背中を支えて抱き起こした。

自分の胸に抱き寄せて、背中をゆっくり叩く。

伝わる呼吸のリズムがゆったりしており、レティがリラックスできているのがわかった。


(連れてきて正解だったな)


「レティ。何考えてる?」

「……リック様のことです」


僅かに上を向いて、にっこりしながらレティが言った。


「私、毎日毎日リック様のことでいっぱいです。時々――パンクしてしまうのではないかと思います」

「そりゃ嬉しい限りだな。持ちきれなくなったら、俺が持ってやるから大丈夫だ」

「はい」


それきり、二人は静かに体を寄せ合うだけになった。そして暫くしてリックがレティを見たら、うとうとしながらすぐに寝入ってしまった。


「船に戻ろう。静かにな」


鳳凰が体を揺らさないように飛行の方向を変え、元来た道を辿って行く。




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