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やきもち3

船長室に戻り、リックは一度レティから離れてクローゼットにジャケットを掛けた。

その後ドアの側に居たレティのところへ行き、手を引いてソファのところまで来て座った。細い腰に手を回し、自分の膝の上に座らせる。

いつもは大人しくしているのにレティが摺り寄せるように身を寄せ、リックの肩に手を乗せた。


「レティ」


上を向いた藍色の目がリックを映す。素直な彼女が、何かを不安に思っているのがすぐにわかる。


「大丈夫か?」

「何がですか?」

「何かを感じているんじゃないか?」

「それは……」

「言いたくないなら言わなくていい。俺の力が必要な時は、頼ってくれ」


レティの目が伏せられたので、リックは髪を撫でて優しく言った。


「はい、リック様。今は、ただ……」

「抱きしめててやる」


驚いたように藍色の目が丸くなり、微笑ましく思った。小さな唇を指の先でちょんちょんとつつき、そして身を屈めた。


「ん……」


軽くキスをしただけでリックは離れ、そしてレティを抱きしめてくれた。

リックの鼓動と呼吸を聞いて、何だか落ち着いてくるような気がする。


「リック様、今日、一緒に寝たいです」

「いいぞ。今夜は甘えん坊だな」

「……ずっと放さないでください」

「わかった。だが、俺の理性……我慢が持てばいいけどな」


ニヤリと笑って見下ろせば、レティが僅かに赤くなった。けど離れることはなく、そのままずっとくっついていた。


(何を不安に思ってるんだ……?)


抱きしめたり撫でたりしながら、リックはレティの様子を窺っていた。

昼間のことはかたが付いたし、特にレティの心を無闇に揺さぶるものはないはずなのに。

小さな子どもをあやすようにレティの背中をゆっくり叩いてやる。そうしてしばらくして、レティは頭を振り、額をスリスリと擦り付けてきた。


(……猫?つーか、マーキング?)


その仕草が可愛いと思ってしまう。レティは止まり、ふっと息を吐き出した。そして口を開く。


「もやもや……するんです。何なのか、何でなのか分からないけど。スッキリしなくて」

「そうか」


レティ自身、初めて経験することはたくさんで、戸惑うことも驚くことも多い。自分の中に知らない感情が芽生えても未経験だから、どう処理していいか分からないのだろう。

少し上を向いてリックは考え、そして閃いた。


「室内にじっとしてるより、外に行くか」

「外ですか?景色見るとかですか?」

「そう。でも、レティが考えるよりもっと凄いもの見に行こう。よっと!」


レティを片手に抱え、弾みをつけて立ち上がった。まず机に向かい、受話器を取って内線をかける。


「ちょっと外出してくる。すぐ戻る」


相手は恐らくディノスだろうとレティは思った。通話を終わらせ、リックはクローゼットを開けてジャケットを取る。


「凄いって、どんなですか?」

「行ってみてのお楽しみだ。これ、持っててくれるか?」

「はい」


ジャケットをレティに持たせ、足早に部屋を出る。すぐ側のレティの部屋にも入った。


「上着持ってるか?少し暖かくしておいた方がいい」

「クローゼットにカーディガンが入ってます」


レティのクローゼットから、薄黄色のボタンが花形になったカーディガンを取り、それも持たせた。


すれ違う船員達と挨拶を交わしながら、外へ進む。リックの速い足で、歩きなのにあっという間に甲板へ出てしまった。ここまでは予想通り。


「上着を着て」


リックに言われて彼に真紅のロングジャケットを渡し、レティはカーディガンに袖を通した。

花柄のボタンがきちんと止められるのを確認し、リックは自分の顔に手を当てた。



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