情熱と切なさ、不安とそれから……。12
「それは?」
レティの抱えたものを見て、シュカは首を傾げた。銀色の艶やかな髪が肩にさらりとかかる。
「シュカさんのお着替えです。合う方をお貸ししようということになって。着替えられますか?」
「勿論。お気遣いありがとうございます」
「副船長さんの案なんです。とても細かく気配りして下さるんですよ」
「素敵な方」
「そうなんです」
レティはにこっと笑い、ベッドの上に服を広げた。
「着替え終わったら声をかけて頂けますか?シュカさんの今のお洋服は、洗濯に回します」
「はい」
シュカはベッドから降り、レティは一度カーテンの外に出た。ゴソゴソと着替えの音がしていたが、しばらくして「すみません」というシュカの声が聞こえた。
「はい」
カーテンの中に入ったら、レティのブラウスとスカートを来たシュカが立っている。
「スカートは大丈夫そうです。このブラウス、丈とかウエストとか袖は問題ないんですけど……」
ボタンが全部止まっていない。鳩尾から首に掛けて、シュカが手で軽く押さえている。
「胸の……辺りが。でも無理やり留めるとボタンが外れたり布が破れてしまうかも……」
手が外れると、ユーシュテより少し小さいくらいの女性ならではの膨らみが見え、それがボタン留めを邪魔しているらしいと分かった。
(ガーン!!)
少しばかりレティはショックを受けた。首の後ろでクスクスと笑う声が聞こえる。
(ユースちゃん、笑うなんて酷いよぉー。ふえーん)
気づかれないようにため息をつき、ユーシュテのワンピースを取り上げた。
「じゃあこっちを合わせてみてもらえますか?」
ユーシュテのワンピースはシュカの体に合ったようだが、スカートを押さえてもじもじした。
「丈が短いですね。普段あまり足を晒さないから少し心許ないです……」
「早目に洗ってお返ししますね」
「宜しくお願いします。何から何までありがとうございます」
ベッドに腰をかけ、シュカが礼を述べる。それからレティの服を見つめて触れる。
「可愛いけど、細身だからなぁ……。私も貴女みたいになりたい」
「でも、私……」
レティが無意識に自分の胸に触れると、シュカが笑った。
「胸が大きいのって羨ましがられたりするけど、いいことばかりじゃなかったり……」
「え?」
意外で思わず聞き返す。
「ちょっとでも露出の多い服を着たら男を誘ってるって思われたり、しつこくナンパされたりね。海岸で倒れてたのもそのせい」
シュカはため息をついた。
「ナンパしてきた男グループをつっけんどんに振ったら、腹いせに追いかけてきて。しつこくて……。逃げて逃げて、力尽きてあの海岸に倒れたんです」
「そうなんですか……。それは怖い思いをされたんですね。お可哀想に」
膝の上で握りしめられている手を、レティがそっと取った。




