情熱と切なさ、不安とそれから……。5
「あー、もう可愛い」
「わっ!リック様」
上から被さり、レティを抱きしめた。
「たまんね……」
しばらくそのままでいて、そしてブーツを脱ぐために一度起き上がった。ファスナーを下げて足を抜き、ついでに靴下も脱ぎ捨てた。
リックも横になり、肘をついて自分の頭を支える。プニプニとレティの頬を突ついたら、レティが人差し指を出してリックを弾き返した。
そこで指を立てたままじっとする。レティの指は、ツンツンと突きながらやがて押し返そうとするが動かない。
「?」
何でだろうと言う顔で指を掴もうとしたので、逆に掴み返した。小さな手は包まれてしまい、押すことも抜け出すこともできずに往生する。
「んんー!」
精一杯押してくる。その手を押し返して、勢いでレティの上に跨った。
「残念」
「ちょっとくらい手加減して下さいよぉ……」
頬をぷくっと膨らませ、おまけに唇まで尖らせてレティが言った。
「そんなに力入れてないぞ。本気出したら痛いだろう」
「そうなんですかぁ」
悔しそうな顔をするのが、また可愛らしい。宥めるために頬を包んで優しく揉んだ。
少し気を取り直し、レティが目を閉じた。気持ち良さそうな顔をしている。
そこに唇を重ねた。軽く、ゆっくりとした動きで。本当はレティは此方のキスの方が好きだということも知っている。
深いのを嫌っているわけではないが、戸惑ってしまうのは毎回。
書庫では逃げ出すということを頭から追い払うため、少し性急にしてしまった。だから、今度は優しくする。
それにキスだけに酔いしれるよりも、レティが持っている風呂上がりの石鹸の香りも楽しみたい。
胸いっぱいに癒しの香りを吸い込み、満足したところで顔を上げた。枕を整え、レティを軽く抱えてきちんと寝かせる。
今度は頬や額に口づけを一度ずつして行き、手はレティから離れ、細い肩のところで蝶結びにされているワンピースの紐を引っ張った。
紺色のそれがほろっと解け、リボンのように散らばる。そのまま少しワンピースを下ろそうとしたら、上手く行かない。
「ん?」
リックの声に気がつき、レティが目を開けた。彼の手の位置を見て、何が引っかかったのかを悟る。
「これ、背中にファスナーがあるんです」
レティがころりと俯せになった。なるほど、腰の少し上までファスナーがあった。
「成る程なぁー。女の子の服って、色々面倒だな」
「面倒ですか?」
「ボタンやファスナーだけじゃなくて、リボンやら何やら別に留めるのが結構あるだろ?可愛いけど、自分が着るとしたら面倒だ。男はあまりそういうのがないから」
そう言いながら、ファスナーを下ろした。ワンピースが緩み、少し下げてそれからレティを仰向けにひっくり返そうとしたら体が固まった。




