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疑惑の写真13

鳳凰は風に乗り、スピードを上げてすぐに船へ着いた。


「レティ、ちょっと待っててくれ」


リックはレティの頭に手を置き、先に助けた彼女を抱き起こして抱え、下に飛び降りた。

ズキン……!また胸の底に、静電気が燻る。無意識に胸を掴んだ。

鳳凰が横目で静かにレティの様子を見守る。

甲板では船医やクルー、ディノスが待機していて、患者を診ているようだ。


「レティ!」


呼ばれ、緩慢な動作で鳳凰から下を見下ろした。


「おいで」


こちらに向かい、リックが両腕を広げている。今日、何時間かぶりに彼の顔をきちんと見た。


「大丈夫だ。怖くない」


ほら、と誘うように腕が動く。ギュッと胸が締め付けられる。息を切なく吐き出して鳳凰の背に膝をつき、そのまま飛び降りた。

リックが力強い腕で、レティを抱きとめてくれる。


「リック様……!」


どうすれば、このどうしようもない気持ちを伝えられるのかわからない。だから抱き合ったそのまま、リックにしがみつく腕に力を込めた。


「リック様、リック様っ」

「どうした?」


リックがレティを腕に座らせるようにしてくれる。そして空いた片方の手で頭を撫でてくれる。


「リック様、……ごめんなさい」


分かっている。自分で自分を信じることができない不安を、どこかでリックに甘えてぶつけてしまっているだけなのだ。


「レティ……?」


表情を窺い見る事の出来ないレティ。肩に額をつけて隠しているだけなのだが、リックは何故かレティが泣いているのではないかと感じた。


「レティ?」


もう一度呼んで確かめようとした時、レティの顔が上がった。だけど、リックからは顔を僅かに反らしてしまい、やはり表情がわからない。

レティはそのままリックから降りた。


「ありがとうございます。服、着替えて来ますね……」


そう言って、ぶかぶかなロングジャケットを着たまま、船員が差し出したバスタオルを受け取って小走りに船内へ入ってしまう。

引き止めることができず、リックはレティの後ろ姿を見送った。

二人の様子をディノスの頭の上にいたユーシュテが、眉間にシワを寄せて見つめていた。


(私、バカだ……)


どうして写真の一枚だけで、普通に接することができなくなってしまうのだろう?

不安で心が縮み上がってしまうのだろう?

リックの側にいるのに安心を覚えられないなんてこと、今まではなかった。

自分の部屋に入り、ジャケットを脱いだ。ドアに寄りかかって、それを胸に抱く。

大好きなリックの色。彼の情熱を反映しているような、赤く燃える色。


(リック様の匂いがする)


太陽に暖められた、風の。




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