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疑惑の写真11

(迷ってる暇はない……)


頭を振って、顔にかかる髪を払う。止められる前に、レティは息を吸い込んだ直後に海に飛び込んだ。

高い位置から入ったため、体に叩きつけられた水が痛い。おまけに勢いがついて、思ったより深く沈んでしまった。

コポポ……。閉じた口の隙間から空気が漏れ、水面へ上がっていく。


(息が切れる前に上に上がらないと!)


足を上下に動かし、腕を前から後ろに掻いて海上を目指した。


(服、意外と重たいな)


育ったのは水に囲まれた島だったから、小さい頃から海には親しんでいたし溺れない程度に泳ぎができるようになっていた。

だが、それはあくまで水着を来た時の場合。今は服で、重たく感じてしまっている。


(あと、少し)


空が透けて見えそうなほど海上に近づいたが、息が限界になりそうだ。


(ちょっと苦しい……)


片目を閉じて、息を吐き出してしまった。届きそうで届かないこの距離がもどかしい。

細い腕、指を上に向けた。


(お願い、私に力を貸して!!)


華奢な体を光の波が走り抜け、海面に広がる。そのまま光は天に向かって伸びた。

キュー……!甲高い鳴き声が聞こえ、レティの後ろから猛スピードで何かが近づいてきた。そして、レティの体にぶつかる。


「ぷ、はぁっ!」


勢い良く海の上に打ち上げられ、空気を吸うことができた。再び水に叩きつけられる前に、レティをツルツルしたものが拾ってくれる。


『無茶したね、レティアーナ』


イルカが背中にレティを乗せてくれている。


「ごめんね」

『良いよ。キミのやりたいこと、助けてあげる。掴まってて』


背中に座り、イルカの背に沿うように掴まった。レティが泳ぐより何倍も早く、島へ向かって走り出してくれる。そして浅瀬の少し手前でイルカは止まってくれた。


『ここから先は、ついて行けないから』

「うん。ありがとう。助かった」


背中から降りて少し泳ぎ、足が着くようになって歩いて海岸に向かった。

気だるい足を引きずり、砂浜へ上がった。

確かに女の人はそこに倒れている。

お下げに結われた髪が片方外れていて、銀色の綺麗なそれが肩から背中に広がっていた。

風変わりな服装で、薄い布で出来ている服は上下お揃いの素材で若葉色のようだ。

大胆にも上は胸のあたりで止まっており、白い背中は露出させて腰にキラキラ輝くベルトを嵌め、そこからはパンツになっているらしい。

足首でふっくら膨らんだ布がまた輝く金具で固定されている。パンツの上は、スカートのような長く薄い腰布がひらひらと覆っていて靴はサンダルだった。

うつ伏せに倒れているその体の横で、レティは膝をつく。

自分の手も濡れて砂がついていたが、彼女の顔や服についた砂を払い、そっと背中に手を乗せた。


「大丈夫ですか?分かりますか?」


何度か揺すったら、うぅ……と小さな呻き声のような物が聞こえた。

長い睫毛が持ち上がり、空のような淡いブルーの瞳が薄っすらと姿を見せる。

指が震えて少し持ち上がったので、その手を両手で掴んだ。


「お願……。助け、……て」


それだけ言い、彼女は頭を項垂れさせて動かなくなってしまった。

どうしようかと思っていたら、空を大きな甲高い鳥の声がこだました。

砂浜に風が吹き荒れ、舞い上がる。


「レティ!!」


鳳凰からリックが飛び降り、砂浜に着地して走ってくる。


「リック様!」

「無事だったか」

「ご迷惑をかけてすみません。リック様、お願いです。この方を船医さんに診せて頂けませんか?弱ってはいるけど、まだ生きているんです」



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