表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
333/451

疑惑の写真10

「レティアーナちゃん、どうした?」

「あそこ、砂浜に誰か倒れてるように見えませんか!?」

「え!?」


レティから双眼鏡を受け取ったクルーが、細い指の示す方向を見る。


「本当だ!女の子が倒れてる!」

「助けましょう!」

「けど、まず船長か副船長に連絡して、許可を取ってから船を寄せないと……。海上と違って島だから、迂闊に近寄ると保安官に見つかる恐れが」

「その間に通り過ぎてしまいます!お願いです、甲板に降ろしていただけませんか?」


レティはクルーの腕を両手で掴んで懇願した。


「そ、そしたらお前は船長に連絡してくれ。俺は下に降りる!」

「分かった」


ここへ連れてきてくれた彼が、レティの腰に腕を回し、綱に掴まって下に滑り降りる。

甲板に降り、レティは一番先端まで走った。


「レティアーナちゃん!待って!」


後ろからクルーが走ってきて、レティの手首を掴んで引き止める。


「そんなに時間はかからない!船長を待って」

「いいえ!待てません!」


振り返った藍の瞳はいつものような優しくふんわりした光を捨て、意思を曲げさせない強い輝きを秘めていた。驚いたクルーがレティの手を放してしまい、その隙にするりと抜けて行く。

着ていたカーディガンを脱いで畳んで床に置き、縁に手をついて登った。水玉模様のワンピースが風に煽られる。

島の方を向き、そのまま飛び降りた。バシャンという水の音が聞こえ、クルーは我に返る。


「レティアーナちゃん!!」


縁に手をついて下を見るが、水面の青にレティの影すら見えなかった。

このまま彼女が上がって来なかったら。そんな恐ろしい考えが脳裏をよぎり、冷や汗を流した。






机に置いてある内線の音に気づき、読み終わった本を書庫に戻していたリックは部屋に戻った。


「はい」

『船長!実は今側にある島の海岸に人が倒れてて、レティアーナちゃんが助けたいと……』

「レティが?」

『はい。景色を見たいってことで見張り台に上げたんですが、そのことに気づいて今は甲板に降りました』

「分かった。俺も外に出よう。航海士を呼んできてくれ」


受話器を戻し、急ぎ足で部屋を出た。が、階段を上がったところでバタバタと忙しない足音がして、一人のクルーがリックの前に飛び出してきた。


「!」


衝突しないように足を止めたら、相手がリックの腕を掴み、切羽詰まった様子で訴えてきた。


「船長!レティアーナちゃんが、海に飛び込みました!!」

「何!?」

「海岸の人を助けるのに船長の判断を待つように言ったんですが、聞かずに海に入ってしまって。それから姿が確認できません!」


(レティ……!!!)


水に入ったはいいものの、上手く水面に上がれずに沈むレティが頭に浮かぶ。


(準備運動もせず、ましてや服のまま飛び込むなんて無茶だ)


「とりあえず外に出るぞ!」


リックが走り出し、クルーが後に続いた。


(鳳凰では水に入らせることができない)


「入ってから、どれくらい経つ?」

「おおよそ三分くらいかと」


(俺が海に入って、あと僅かの間に見つけられるか?)


ドアを開けて外に出た時、船から僅かに離れた水面から金色の光の柱が上がった。


「レティ!!」


船縁から身を乗り出してクルーと二人で水面を見たら、何かの影が素早く動いて光へ向かっていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ