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疑惑の写真9

話を聞いてくれたユーシュテにお礼を言って別れ、甲板に出た。

物干しスペースから外を眺めていたら、食堂から水筒を持ったクルーが下から上に向かう綱に手をかけた。


「あの!」


レティは身を乗り出し、上から覗き込む。声に気づき、視線がこちらに向く。


「おう!レティアーナちゃん。どうした?」

「それ、何でしょう?」


毎日その上に伸びるものからクルーが行ったり来たりしていることは知っていたが、それがどこに続くか何のためのものなのかは知らなかった。


「これ?見張り台に続いてるんだよ。当番が登り下りに使ってんの。知らなかった?」

「はい。見張り台ってあそこですよね?」

「そうそう」


マストの更に上にある場所を指差し、頷きを得られた。


「景色、いいですか?」

「んんー。遠くまで見渡せっけど、殆ど海が広がってるだけだよ。たまに客船とか漁船、小さい島とか鳥は見えるけど」


レティは風に煽られる髪を抑え、再度上を見上げた。


「気になるなら、一度行ってみる?」


クルーはニカッと笑い、親指を上に向けた。


「いいんですか?お邪魔じゃないですか?」

「あっはっは。いいよ。狭いところに男二人もいるから、むさ苦しいかもしれないけど。それでもいいなら」

「行きたいです!」


レティは表情を輝かせ、甲板へ降りて行った。


「じゃあ、掴まって。この縄に手をかけて、そう。俺が支えるから」


レティが縄に掴まり、クルーが片手で同じようにしてもう片方でレティの腰を支えた。

縄の側にラッパ状の金管があり、クルーはそこに向かって話した。


「おーい。頼む。上に上げてくれ」


すぐに縄が回転しながら上に上がった。


「きゃーっ!」


結構スピードがあり、驚きで声を上げる。


「大丈夫?」

「はい。驚いてしまったので。それにスカートが」


上は下よりも風が強く、パタパタと裾が煽られていた。中が見えていないか心配だ。


「ははっ!次に来る時はスカートじゃない方がいいかもな」

「そうします」


レティは少し顔を赤くして答えた。


綱はそのまま見張り台の床に繋がっていた。中で外を見ていた当番のもう一人が、仲間の帰りに顔を向けて驚く。


「うぉおう!?レティアーナちゃん?」

「お邪魔します……」


レティは小さく挨拶をした。


「ここに来たそうだったから、連れてきた」

「連れてきたって……。船長に怒られるぞ」

「大丈夫だって。それより、下ろしてやって」


細い腰に腕を回され、抱えてもらって降りた。

見張り台はぐるりとガラス窓が一周しており、好きな方向から外が見られるようになっている。


「わああっ!」


同じようにぐるりと一周している椅子に座り、体を捻って外を見た。


「本当に本当に遠くの方まで見えますねっ!」


本日快晴。薄い空の青の下で、濃い海のブルーが広がっている。元々綺麗な青に、太陽の光がキラキラ反射してダイヤモンドでも転がっているようだ。

嬉しそうなレティの姿を見て、クルーの二人も顔を見合わせて笑う。


「そんなに喜んでくれるなんて、連れて来た甲斐があったよ」

「はいっ!あ、島が見えますよ」

「あー。あの島は寄らないんだ。今度はもう少し先だったと思う」


随分と近くに見えている島は、素通りのようだ。


「そうなんですか」

「何なら、双眼鏡使う?」

「ありがとうございます」


受け取って、再び島と海を眺めた。久々に歌おうと口を開いたが、声を出す前にやめてしまった。


「たっ……大変です!!」


立ち上がって叫ぶ。



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