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疑惑の写真4

「シーツを抱えて歩いてるのを見ましたよ。多分洗濯所じゃないですか?」

「あー、それは大分前の話っすね。物干しのとこじゃないすか?」


外に出て見たら物干し竿には洗濯物が綺麗に干され、風に揺られていた。そこで、甲板をデッキブラシで掃除していたクルーを呼び止める。


「レティアーナちゃんですか?食堂に入って行きましたけど」

「船長、どうかしました?え?あー、彼女なら飲み物を飲んだ後に出て行きましたよ」


テーブルを布巾で拭いていたシェフが答えた。


「書庫の方の通路で見かけました」

「副船長の部屋の前で、ウロウロしていたと思います。入るか入らないか迷う、って感じで」


レティの足取りを追い、リックはディノスの部屋を訪れた。ノックをするが返事がない。

勝手に開けて入ったらレティはもちろん、主のディノスは不在でドールハウスも空だった。







大きな船とはいえ、限られた空間でなかなか会えないので自分で気配を追うことにした。

足を止めて壁に寄りかかり、目を閉じた。ディノス達も含めて全員の大まかな方向が分かる。

とりわけふわふわゆるりとした気配のレティは、今は移動しているようだ。


(反対側の通路?)


食堂側に向かっているような気がする。ちなみにディノスの気配も食堂にあるようだ。そこで、再び食堂に足を向ける。

中に入ったら、コーヒーカップを持ったディノスがいた。


「ディノス」

「ああ、リック」


ディノスは足を止めた。


「レティを見なかったか?こっちの方に来た気配があると思ったんだが」

「そうなのか?見てないな。何か用か?見かけたら、伝えてお前のところに行くように言っておこう」


二人は歩きながらドリンクコーナーへ向かう。ディノスがシェフからリックのマグカップを受け取った。水色の地にグリーンのストライプが入ったそれに、ホットコーヒーを注ぐ。

終わるとリックに差し出した。


「いや、特に用事があるわけじゃないんだが……。待ってても戻ってこないから、何か面倒な頼まれごとでも引き受けたのかと思ってな」

「解決できそうにないなら、俺やリック、お前を頼ってくるはずだ。レティアーナも子どもじゃないし、待ってやれ」

「それもそうだな……。心配しすぎか」

「可愛がるのも結構だが、程々にしておけ」

「ああ」


それから会話のないまま二人は立っていたが、リックは中身を空にして出て行った。ディノスも同じように、使用済みの籠にカップを置いた。


「もういいぞ、レティアーナ」

「……すみませぇん」


蚊の鳴くような小さな声がした。シェフがいるカウンターの向こうから、レティがちらりと姿を見せた。

床に手と膝をつき、そのままのそのそと出てきた。


「ああ、お嬢ちゃん」


ジャンが奥から姿を見せ、カウンター近くにいたシェフに手で何かを指示する。

読み取ったシェフは、少し屈んでおしぼりを差し出した。


「熱いですから気をつけて」

「ありがとうございます」


受け取り、手を拭いた。


「膝もちゃんと綺麗にしておきなよー」

「はーい」


ジャンの声がまた飛んできたので、顔をそちらに向けて返事をした。


「ねぇねぇねぇ!」


レティの肩にうつ伏せに乗っていたユーシュテが、足をパタパタさせて言う。


「何で隠れんの?」

「……」


藍色の目が揺れ、俯き加減になって視線が逸らされる。

レティはクルーが目撃した通り、リックより前にディノスの部屋を訪れていた。


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