表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
325/451

疑惑の写真2

この船に連れてきてもらった最初の頃は毎日一緒に寝て、今でもたまに入らせてもらうことがある幅が広いベッド。

丁寧にカバーを外し、付け替えて行く。几帳面なディノスの部屋でそうするように、シワが残らないよう叩いたり伸ばしたりした。


(リック様……)


この部屋は大好きだ。仕事が終わってベッドの前に立ったまま、部屋や水中が見える円窓の外を眺める。

忙しい彼はその中でもレティのことをいつだって気にかけてくれていて、時間を作ってこの部屋へ誘ってくれる。


(今日はいつお話できるかな?)


朝、起こすのにドアの外から声をかけられて、そして食堂で朝昼少し話したきりだ。

早く会いたい。少しでも多くリックといたい。そんな甘酸っぱいことを考えながら、使用済みのシーツ類を拾い上げた。

クン!突如それが突っ張った。気づかないうちに踏んづけていたらしい。バランスを失って、体が揺れた。そのまま二、三歩よろけ、レティは床に広がる布の上に勢い良く転げた。


「きゃあーっ!」


布は薄く、クッションにはならなかったのでバタッというわかりやすい音がした。


「あ、いたたた。またやっちゃった……」


起き上がり、そしてシーツを破いていないか確認したら大丈夫だった。安堵した彼女の前に、リックの机の下に落ちている何かが目についた。

ハガキよりも少し小さめのサイズの白い何か。


「机から落ちたのかな?」


立ち上がってそれを拾い、そのまま机に置いた。それからシーツ類を拾い直して出て行こうとしたら、通りすがりの風が当たったらしい。またヒラリと先程の紙が舞って床に滑った。


「押さえ、しておかなくちゃ」


手荷物をまた床に置き、それを拾おうとして止まった。先ほどのは裏側だったようだ。今回は部屋の電気に反射して、表面がピカッと光った。


(え……?)


拾おうとする動きが止まる。細い指先には、腕を頭の後ろに上げ、カットの深い水着を着ている女の人が写っていた。勿論知らない人。

水着をはちきらんばかりのボリュームのある胸と間の谷間。それなのに腰の括れはきちんとあって、少し開いた足は太くはないが適度に肉付きがいい形をしていた。

束ねている髪のせいで見える細いうなじ。そして彼女の艶やかなピンクの唇は、こちらに向かって投げキスでもしているように見える。


(どうしよう……)


リックの部屋に、まさかこんなものがあるなんて思わなかった。彼が持っていることも。

そして事故とはいえ、レティの目に触れるべきではなかったものであることも分かる。

震える手でそれを拾い、机に戻す。二度と落ちないように、置いてあった本で重しをした。

胸が重く苦しく、でも激しく鳴り響いている。

リックは以前言ってくれた。自分の胸の大きさを気にするレティに、『俺は、レティが持っているものなら何でも好きだ』と。

嘘ではないだろう。現に、彼はレティを愛して可愛がってくれている。だけどもし、あの言葉が自分に遠慮をした、優しさから出たものだったとしたら。


『リチャードを信じてあげて』


(わかってる。リック様は優しいから。優しいって信じてるから。だからこそ……)


言えないことがあるのかもしれない。

そう思ったとき、不意に部屋のドアが開いた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ