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ラグナロクの翼 ―あの蒼い空と海の彼方―  作者: Mayu
秘められた力の章
322/451

嵐が去ってまた11

「さて、やっと落ち着けるってとこかしら?」

「そうだな」


ユーシュテがディノスの肩の上に座ったまま、手と足を伸ばす。そんな様子を微笑ましく見ながら、ディノスは答えた。


「あなた方は、これからどうなされるのですか?」


チェルシアが尋ねた。


「俺たちもここを出ようと思ってる。仲間を待たせてるんでな」

「まあ、そうですの。賑やかだったのが一気に寂しくなりますわね。では」


手が差し出される。リックはそれを握った。


「改めまして、今回はお世話になりました。兄様と私だけでは、このように早く解決できなかったかもしれません」

「俺たちは、仲間を取り戻しただけだ」

「だとしてもです。例え目指す先が同じだけだったとしても、助けになったのには違いありませんから。ありがとうございました」


手を離し、スカートを少し持ち上げてチェルシアが礼をした。


「良い旅を」

「ああ……」


頷いた時、その場の空気を破るような声が聞こえた。


「キャプテ――ンっっ!!!」

「ん?」


辺りに響き渡る大声。その方へ顔を向けたら、仲間が数人走ってくる。一人は何かを掴んでいて、その手を上に上げている。


「大変ですっっ!!見てください、これっ!!キャプ……」


リックの周りに気がついた一人が、叫ぶ仲間の頭を引っ叩いた。それで、言い直す。


「リチャードさん!!」

「煩いわよ!恥ずかしい!」


ゼイゼイと息をしながら膝に手をつくクルーたちに向け、ユーシュテが目を尖らせて指を突きつけた。


「と、とにかく……っ、これ!」


リックは差し出された紙を受け取った。レティとディノスが隣に立って、覗き込む。

それは号外のような新聞記事。リックは目を見開いた。


「何だこれは!!!」


【アリオナ王国に楽園の女神現る!!!】


そう見出しのついた記事の全面の写真に、妖精のような羽根を付け、宙に浮かぶレティの姿があった。

リックと協力して、崩れる塔から落ちる人々を拾っているシーン。

どこからかカモメがたくさん飛んできて、町中に紙がバラバラと散らばる。外に出ていた人々が、その紙を拾ったり掴んだりしてざわつき始める。


「何事ですの!?」


チェルシアは一変した空気に驚いている。

そのうち、カメラを持ったりメモを持ったチームが出始めた。


「いたぞ!あそこだ!!」


レティに気がつき、指を差す。


「リック!」

「リチャード!」


ディノスとユーシュテに頷く。リックはレティの腕を引いた。そして抱き上げる。


「きゃっ!リック様!?」

「ここは一旦退くぞ、レティ!」

「あ!でもっ!」


レティはリックに抱かれたまま、手を伸ばす。


「チェルシア様、どうかお元気で!今回はありがとうございました!あと、あと、カナラス様にも宜しくお伝えください」

「ええ。貴女も道中気をつけて」


慌ただしく握手を交わす。二人の手が離れたのを確認し、リック達は走り出した。


「お前たち、こっちだ!」

「え――!また走るんすか――!?」

「質問攻めにされたければ、そこに残ってろ!但し、自分たちで記者を完全に蒔いてから戻ってこい!」

「そりゃないっすよ、ディノスさん!」


ディノスに追い立てられ、息を整えたばかりのクルーがフラフラと立ち上がる。ひーひー言いながら、リック達の後をついてくる。


「大体せんち……リチャードさん達は足速いんすよぉお!」

「つべこべ言うな!」


泣き言を言っているクルーにディノスが喝を入れる。


「レティ、しっかり掴まってろ」

「はいっ!」


リックに言われ、肩に置いていただけだった手を更に伸ばし、手と手を繋ぎ合わせて体を寄せた。

元々速いリックの走るスピードが更に上がった。


(速すぎて……、リック様と空を駆けているみたい)








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